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ART NEWS 5選【2026年10月第3週】|+び。STATION増刊号

美術館や展覧会のニュースだけでなく、木工とAI、漫画・アニメ、伝統的な版画技法、屋外彫刻までを網羅!

+び。STATIONでは、国内外で起きているアートの動きから、気になるニュースをピックアップ。今週は2026年10月12日(月)〜18日(日)の動きから、国内3本・海外2本のART NEWS 5選をお届けします。

「何が起きたのか」だけでなく、どこが面白いのか、なぜ注目したいのかも一緒に見ていきましょう。

国内のART NEWS

1|86歳のピカソが約200日で347点を制作!―現代作家7人が巨匠の版画に挑む

京都市伏見区の京セラギャラリーで10月16日、特別展「トラバース:ピカソ『347シリーズ』と現代作家たち」が開幕しました。1968年、86歳のピカソは3月16日から10月5日までの約200日で347点の銅版画を制作。京セラは、この連作全点を所蔵しています。

今回は全347点を一度に展示するのではなく、選ばれたピカソの約20点に、京都精華大学の卒業生・教員である現代作家7人の作品約50点を組み合わせます。参加作家は連作を調べ、気になった一枚を起点に、絵画、版画、漫画、映像、インスタレーションなど異なる表現で応答しました。時代も技法も異なる作品を並べることで、巨匠の版画が現代の創作につながっていきます。

開催場所:京セラギャラリー(京都府京都市)
会期:2026年10月16日(金)〜11月28日(土)※日曜日、11月23日は休場

関連記事|10月16日号「ピカソ347シリーズ」

ここがポイント

一人の巨匠を研究する展覧会でありながら、見るべきものはピカソの作品だけではありません。若い作家たちは、連作の中から自分の関心に響く図柄を選び、別の表現へと作り替えます。同じ版画でも、選ぶ人によってまったく違う出発点になるのです。完成から約60年を経た作品を、過去の名作として固定せず、新しい作品を生み出すきっかけとして見直す企画です。

参考:京都精華大学 公式発表(2026年9月16日)

京都精華大学の公式サイト →

2|家具なのか楽器なのか?―木工職人の技術とAIが出会う不思議な展覧会

東京・西麻布のKARIMOKU RESEARCH CENTERで10月17日、真鍋大度と神山友輔による展覧会「Machines of Loving Grace」が始まりました。2人は生成AI「Claude」とともに作品を構想し、カリモク家具の木工技術を使ってインスタレーションを制作しています。

真鍋の《Timber / Timbre》は、家具と楽器の境界を探る作品。木、植物、電子回路、AIを結びつけ、自然の素材と人工的な仕組みの関係を問い直します。神山の《Dance as Waves》では、光るアームを備えた3体の木製構造体が動き、弧を描いた軌跡が波のように重なります。会場では完成作品だけでなく、制作工程と職人の技術を示すアーカイブも公開します。

開催場所:KARIMOKU RESEARCH CENTER(東京都港区)
会期:2026年10月17日(土)〜25日(日)

ここがポイント

AIが生み出した画像を眺める展示とは違い、今回の主役は実際に動く木の構造物や、手で加工された素材です。木の性質を知り尽くした職人の経験と、AIを用いた構想を同じ制作過程に置いている点が特徴です。「AIが人間の仕事を代わるか」だけではなく、「異なる知識を持つ相手と、どう一緒につくるか」という問いとして見てみたい展覧会です。

参考:真鍋大度 公式プロジェクト案内(2026年10月14日発表)

展覧会の公式サイト →

3|石に描いた絵が紙に刷り上がる!―大阪の小さな印刷所で「石の版画展」

大阪・京橋の鶴身印刷所で10月16日、小さな展覧会「石の版画展」が始まりました。石版印刷に初めて取り組んだ人から、約3年制作を続けてきた人までの作品が並びます。石版印刷は、水と油の反発する性質を利用して、石に描いた図柄を紙へ刷る「平版」の技法です。

展示の中心は2階の講堂ですが、1階には印刷の仕組みを説明するパネルと実際の印刷機も設置。講師が手づくりした小型石版印刷機の実演や、木版画の小展示もあります。実演は開始時刻を固定せず、会場の状況に合わせて行われる予定です。最終日の10月24日には、来場者が石版印刷機を使って刷る体験も予定されています。見事な完成品を並べるだけでなく、手仕事の工程を間近に見せてくれる、印刷所ならではの催しです。

開催場所:鶴身印刷所(大阪府大阪市)
会期:2026年10月16日(金)〜18日(日)、23日(金)〜24日(土)

ここがポイント

版画の魅力は、絵を描くことだけでなく、「どう刷るか」にもあります。石の上では図柄と水分、油性のインキが異なる働きをし、紙へ移すと一枚の作品になります。作家の作品を見た直後に、実際の印刷機でその原理を確かめられるのが今回の面白さです。小さな会場ですが、作品と技法を切り離さず紹介するという点で、版画が初めての人にも入口になる展示です。

参考:鶴身印刷所 公式案内

鶴身印刷所の公式サイト →

海外のART NEWS

4|妖怪、ゴジラ、鉄腕アトムまで!―アジア200年の空想世界400点以上が香港に集結

香港の美術館M+で10月17日、特別展「Myths and Monsters: The Art of Fantasy in Asia」が開幕しました。19世紀から21世紀までのアジアの視覚文化を、神話や怪物、空想世界という切り口からたどる展覧会です。展示は400点以上に及び、ゴジラや『鉄腕アトム』に親しむ人にも入りやすい内容になっています。

会場は4章構成で、日本の浮世絵、中国の影絵、チベットの仏画などの古い表現から始まり、アジアに広がったシュルレアリスム、戦後の漫画・アニメへと進みます。最後はゲーム、ファッション、建築、デジタル表現にまで視野を広げ、空想のキャラクターや物語が分野を越えて生き続ける姿を紹介。美術史とポップカルチャーを一緒に眺める大規模展です。

開催場所:M+ 西ギャラリー(香港・西九文化区)
会期:2026年10月17日(土)〜2027年4月4日(日)

関連記事|10月17日号「アジア200年の空想世界」

ここがポイント

妖怪や怪物は、ただ怖がらせるための存在ではありません。人々が抱える不安や、現実ではかなわない願いを映す役割も担ってきました。昔の絵巻や浮世絵から、現代のアニメ、ゲームまでを一本の流れで追うと、時代によって空想の形が変わってきたことが分かります。「漫画は美術と別のもの」と区切らず、互いにつながる表現として見ることができる展覧会です。

参考:M+ 公式展覧会案内、West Kowloon Cultural District公式発表(2026年10月16日)

M+の公式サイト →

5|海岸2キロに彫刻100点!―開催30周年の芸術祭で巨大な鉄の彫刻が受賞

オーストラリア・シドニーで10月16日、海岸沿いの屋外彫刻展「Sculpture by the Sea, Bondi」が開幕しました。開催30周年の今年は、ボンダイからタマラマまで約2キロの海辺に、14か国の作家による約100点の彫刻が登場。海と崖、空を背景に作品を無料で鑑賞できる催しです。

開幕時に発表された主要賞の受賞作は、ハリー・ファッシャーの《Unveiling the Edges of the Sky》。鋼鉄とブロンズでつくられ、高さ約6メートル、長さ約5メートルに達します。作家が素材を加工した大規模な作品が、海沿いの開けた風景に置かれます。今年は初参加の作家も30人に上り、屋内の美術館とは異なる環境で、彫刻がどのような存在感を持つのかを体験できます。

開催場所:ボンダイ〜タマラマ海岸遊歩道(オーストラリア・シドニー)
会期:2026年10月16日(金)〜11月2日(月)

ここがポイント

美術館では、作品を照らす光や周りの空間がある程度整えられています。しかし海辺では、日差し、波、風、通りかかる人までが作品の見え方を変えます。大きな彫刻も、遠くから見ると自然の風景の一部になり、近づけば素材の重さや加工の痕跡が伝わります。同じ作品が場所によって違って見えることを、文字どおり歩きながら実感できる展覧会です。

参考:Sculpture by the Sea 公式発表(2026年10月16日)

芸術祭の公式サイト →

まとめ

今週は、古い技法と新しい発想が出会うニュースが目立ちました。京都では、ピカソが約200日間で制作した347点の版画連作を、現代の若い作家7人が自分たちの方法で読み直しています。東京では、カリモク家具の木工技術とAIを取り入れた、家具とも楽器ともつかない作品が生まれました。

一方、大阪の小さな印刷所では、石に描いた図柄を紙へ移す石版印刷の仕組みを、作品と実演の両方から紹介しています。創作の道具は変わっても、素材を観察し、手を動かし、試行錯誤する面白さは変わりません。

海外では、香港M+が妖怪や漫画、アニメ、ゲームを200年の空想表現として捉え直し、シドニーでは100点もの彫刻が海辺の風景に並びました。作品をつくる方法だけでなく、作品を「どこで、どう見るか」まで自由に考えられるのが、今週のニュースの魅力です。

今日のアート

ドガ《帽子屋》

ドガ《帽子屋》。若い帽子職人と青い目のマネキンの頭を並べた1882年頃のパステル・木炭画。
エドガー・ドガ《帽子屋》(The Milliner)、1882年頃、パステル・木炭・紙、47.6×62.2cm、メトロポリタン美術館所蔵
(原画像:The Metropolitan Museum of Art/Public Domain)

この絵には、二つの顔が描かれています。でも、そのうち一つは人間ではありません。

フランスの画家エドガー・ドガが1882年頃に制作した《帽子屋》。画面には、帽子店で働く若い女性と、青い目をしたマネキンの頭が描かれています。人間と人形を並べることで、ドガは少し不思議な対比をつくり出しました。

実は、ここにはもう一つ興味深い点があります。メトロポリタン美術館によると、描かれた少女は、ドガの彫刻《14歳の小さな踊り子》のモデルとなったマリー・ファン・ホーテムに似ているというのです。

舞台で踊る姿だけでなく、練習する踊り子や、帽子店で働く女性たちにも目を向けたドガ。華やかな世界を支える人々の、普段は見えにくい姿にも関心を寄せていました。

1882年頃/パステル・木炭・紙/メトロポリタン美術館所蔵

参考:メトロポリタン美術館 公式作品解説

メトロポリタン美術館の作品解説 →