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最新ART NEWS 10選【2026年10月24日】|+び。STATION

美術館や展覧会のニュースだけでなく、パブリックアート、メディアアート、工芸、ファッション、音楽と絵画の融合、実験的な彫刻、建築、ZINE文化までを網羅!

+び。STATIONでは、国内外で起きているアートの動きから、気になるニュースをピックアップ。2026年10月24日は、国内5本・海外5本の計10本をお届けします。

「何が起きたのか」だけでなく、どこが面白いのか、なぜ注目したいのかも一緒に見ていきましょう。

国内のART NEWS

1|空に巨大な人間の顔が浮かぶ!―5年ぶりの「まさゆめ」、今度は奥多摩の山あいにも出現

東京都は10月23日、文化芸術祭「ARTE TOKYO」の新たな特別企画を発表しました。その一つが、現代アートチーム・目[mé]による《まさゆめ》です。実在する一人の人物の顔を巨大な立体物としてつくり、空に浮かべるという、何とも不思議な作品です。

《まさゆめ》は2021年にも東京で実施され、今回、5年ぶりに代々木公園へ帰ってきます。さらに、初めて奥多摩町でも展開。11月21日・22日は山あいの空に、12月5日・6日は都心の空に巨大な顔が現れる予定です。

同じ形でも、周囲の山並みや建物によって見え方は大きく変わるはずです。東京都はあわせて、浜離宮恩賜庭園でのチームラボの新企画や、都内39館が参加する夜間開館プログラムも発表しています。

開催場所:奥多摩町・代々木公園(東京都)
会期:奥多摩町=2026年11月21日(土)・22日(日)/代々木公園=12月5日(土)・6日(日)※荒天中止・予備日あり

ここがポイント

街角で誰かの顔を見かけるのは普通のことですが、その顔が空に巨大な姿で浮かんでいたらどうでしょう。現実の風景なのに、夢の中の出来事のように感じられます。《まさゆめ》の面白さは、顔の形そのものだけでなく、見慣れた場所にありえないものが現れることで、風景の意味が変わるところです。今回は山あいと都心という異なる環境で、同じ作品がどのような印象を生み出すのかにも注目です。

参考:東京都「ARTE TOKYO 3つの特別企画を追加発表」(2026年10月23日)

東京都の公式発表 →

2|絵具は自分で絵を描く?―乾燥で生まれる「泡」と、ピアノの音で落ちる絵具

東京・表参道のGARDE ART GALLERYで10月23日、現代美術家nAo OKAMOTOの個展「BUBBLE ART POSSIBILITY」が始まりました。作家が2008年から取り組む「Bubble Art」は、絵具の表面張力や乾燥、収縮によって形が生まれる独自の表現です。

制作では、キャンバスに円形に置いたアクリル絵具が、乾くにつれて縁に集まります。完全に固まる直前に柔らかい中心部分を拭き取ると、縁が立体的な輪となって残り、光の当たり方で表情を変えます。

さらに今回は、ピアニストのKazuhiro Ichiと結成したユニット「TRACE」の作品《Traces of a Performance》も東京で初展示。ピアノ演奏を電気信号に変換し、その信号に応じて絵具を落下させ、音楽の痕跡をキャンバスに記録する試みです。

開催場所:GARDE ART GALLERY(東京都港区)
会期:2026年10月23日(金)〜11月6日(金)

ここがポイント

絵を描くとき、普通は手で絵筆を動かします。しかし、この作品で重要なのは、絵具そのものが持つ性質です。乾く、縮む、重力で落ちるといった現象が、作家の意図だけでは決められない形をつくります。さらに音楽を電気信号へ変えて絵具を動かせば、演奏した時間も画面に残ります。音をそのまま図にするのではなく、音によって生じた出来事を絵として残す。制作過程そのものが作品になる表現です。

参考:NPO青山デザインフォーラム「nAo OKAMOTO個展」公式発表(2026年10月23日)

ADFの公式発表 →

3|糸に映像を投影すると、風景がほどけていく?―松戸の芸術祭で見えない世界を体験

千葉県松戸市で10月24日、国際フェスティバル「科学と芸術の丘2026」が開幕します。歴史ある戸定邸や戸定が丘歴史公園を舞台に、科学とアートが交差する作品やワークショップが展開されます。

注目したいのは、メディアアーティスト・穴井佑樹の《layers》。一本ずつ撚って幾重にも張り巡らせた糸が、映像を受け止める立体的なスクリーンになります。各地で撮影された風景や自然の映像を独自のプログラムで分解・再構成し、糸に光を重ねることで、風景がほどけたり混ざり合ったりするような表現を生み出します。

ほかにも、果物や野菜などに由来するインクを用いた作品や、身体を動かしながら風景を考えるワークショップなどが登場。目に見えない小さな世界や人の記憶を、異なる感覚から探る2日間です。

開催場所:戸定邸、戸定が丘歴史公園ほか(千葉県松戸市)
会期:2026年10月24日(土)〜25日(日)

ここがポイント

映像を投影する場所といえば、普通は平らなスクリーンを思い浮かべます。しかし《layers》では、何重にも張られた糸がその役割を担います。光が糸の間を通り抜け、重なり合うことで、同じ風景でも見る位置によって異なる表情が生まれます。さらに自然素材のインクや身体を使った表現など、作品を通じて身近な現象を新しい視点で見つめられることも、この芸術祭の魅力です。

参考:松戸市「科学と芸術の丘2026」公式発表

松戸市の公式発表 →

4|美術品を「香りを聞く」ように鑑賞する?―銀閣寺の非公開書院に16人の工芸作品

京都の東山慈照寺、通称・銀閣寺で11月8日から、展覧会「相客香(あいきゃくこう)」が開催されます。10月23日に詳しい内容が発表されたこの展覧会は、日本文化における「香を聞く」という鑑賞の作法を、現代の美術工芸に重ねる企画です。

展示には、陶土、漆、木、金属、ガラス、天然繊維などを扱う16人の作家が参加。異なる素材や世代の作品が、わずか3日間、同じ空間に集まります。

会場は銀閣寺の書院と集芳軒。通常は公開されていない書院では、富岡鉄斎の襖絵《大江捕魚図》も特別公開されます。「相客」という言葉には、偶然同じ席に居合わせた客という意味もあり、作品と鑑賞者の一期一会を意識させる構成です。

開催場所:東山慈照寺(銀閣寺)書院・集芳軒(京都府京都市)
会期:2026年11月8日(日)〜10日(火)/事前日時指定制

ここがポイント

香道では、香りをただ良い・悪いと判断するのではなく、自分の記憶や感覚と照らし合わせて味わうことがあります。この展覧会では、その姿勢を工芸作品の鑑賞にも取り入れます。素材の手触りを想像したり、作品の形から別の景色を思い浮かべたりすることも、一つの見方になるのでしょう。しかも会場は、日本の鑑賞文化に深く関わる銀閣寺。作品だけでなく、置かれた空間や鑑賞する時間まで含めた企画です。

参考:日本の美術工芸を世界へ実行委員会/ArtSticker 公式発表(2026年10月23日)

「相客香」公式サイト →

5|パリの花の女神が、日本の蚊帳をまとう。日仏の感性を一着にした不思議なドレス

東京都港区は10月23日、パリ市15区との文化交流から生まれたファッション・アート作品《フローラ 都市の糸》を発表しました。10月31日から六本木ヒルズのショーケースで展示されます。

作品のモチーフは、ローマ神話に登場する花の女神「フローラ」と、港区の象徴であるハナミズキ。衣装には日本の伝統素材である綿蚊帳生地を使い、フランス式の制作技法を組み合わせています。

デザインは港区で活動する種井小百合が担当し、パリを拠点とする中島みゆきが花装飾を監修。戸板女子短期大学服飾芸術科の学生たちが制作に参加しました。完成した衣装は、単に着るための服というより、日本とフランスの文化をまとった一つの立体作品です。

開催場所:六本木ヒルズ ハリウッドビューティープラザ1階ショーケース(東京都港区)
会期:2026年10月31日(土)17:00〜11月5日(木)20:00

ここがポイント

蚊帳は、かつて虫を防ぐために使われてきた身近な布製品です。その素材が、パリの花の女神を表す衣装に生まれ変わりました。日本の素材とフランスの技法を一つの服に取り入れることで、異なる土地の文化が目に見える形で結びつきます。さらに、プロのデザイナーと装飾作家、服飾を学ぶ学生が共同制作した点も特徴です。ファッションを、身体にまとう文化交流の作品として眺められます。

参考:東京都港区「日仏のアーティストと学生が創るファッション・アート」(2026年10月23日)

港区の公式発表 →

海外のART NEWS

6|絵が大きすぎて展示できない!―高さ11メートルの作品のために、美術館を建ててしまった

ドイツ・キュンツェルザウのMuseum Würth 2で、アンゼルム・キーファーの巨大絵画《Schwarze Flocken(黒い雪片)》を展示する専用パビリオンが公開されています。10月22日、約18年間も収蔵されていた作品が、ようやく展示できるようになった経緯が報じられました。

作品の大きさは高さ11.2メートル、幅7.1メートル。収集家ラインホルト・ヴュルトが2008年に購入しましたが、コレクション内のどの展示室にも収まらないほど巨大でした。

そこで建築家デイヴィッド・チッパーフィールドに依頼し、この1点のための専用建築を建設。キーファー自身も部屋の寸法や入口、壁の色を指定しました。コンクリートの建物には天窓が設けられ、自然光が作品を照らします。

開催場所:Museum Würth 2・アンゼルム・キーファー・パビリオン(ドイツ・キュンツェルザウ)
会期:2026年10月13日(火)公開開始/常設パビリオン

ここがポイント

普通は展示室の大きさに合わせて作品を選びます。しかし今回は、作品があまりに巨大だったため、建物の方を作品に合わせてつくりました。しかも、単に大きな壁を用意したのではありません。入口の位置、光の入り方、鑑賞者が絵に向き合う距離まで検討されています。一点の絵画を鑑賞するための建築そのものが、作品の一部のように機能するのです。絵画と建築の関係が逆転した、非常に珍しい展示方法です。

参考:Würth Group「Anselm Kiefer Pavilion」公式案内/The Art Newspaper(2026年10月22日)

Würth Groupの公式案内 →

7|風は見えないのに、風の彫刻は見える?―人が動くと光が流れるガラスのインスタレーション

英国ロンドンのLadbroke Hallで、アムステルダムを拠点とするアートスタジオDRIFTの新作《Aeolus》が公開されています。名前の由来は、ギリシャ神話に登場する風の神アイオロスです。

作品は、細長いガラスの棒と光を組み合わせた巨大なインスタレーション。制作では会場の建築空間を読み取り、その中を空気がどのように流れるかを考えながら、彫刻の形を構成しています。

吊り下げられたガラスそのものは大きく動きませんが、鑑賞者の動きに反応して内部の光が移動します。すると、目には見えないはずの風が、光の流れとして空間に現れたように感じられます。

10月15日にDRIFTが新作を紹介し、会期は10月25日までとなっています。

開催場所:Ladbroke Hall(英国ロンドン)
会期:2026年10月13日(火)〜25日(日)

ここがポイント

風を絵に描こうとすると、木の葉や雲、揺れる布など、風によって動かされたものを描くことが多くなります。しかしDRIFTは、風の流れそのものを彫刻の形へ置き換えました。さらに、鑑賞者が動くと光も動くため、作品を見る人も変化を生み出す存在になります。物体としてのガラスは静止しているのに、光によって動きを感じる。見えない現象を、形と時間で表現した作品です。

参考:Studio DRIFT「DRIFT PRESENTS AEOLUS AT LADBROKE HALL」公式発表(2026年10月15日)

Studio DRIFTの公式発表 →

8|古代エジプトの壺が、未来の生き物みたいに進化?―伝統陶芸を再構成する奇妙な彫刻

米国ニューヨークのYossi Milo Galleryで10月22日、エジプト出身の陶芸家イブラヒム・サイードの個展「Shaping Time」が始まりました。歴史的な陶器の技法と、現代的な造形を組み合わせた彫刻作品を紹介しています。

サイードが育ったカイロ旧市街には、長い陶芸の歴史があります。特にフスタート地区では、釉薬の光沢や細かな文様を特徴とする陶器がつくられてきました。作家は幼い頃から、そのような職人の仕事に親しんできました。

今回の作品では、壺のような陶器が曲線状の柱でつながったり、幾何学模様の装飾が表面を覆ったりしています。伝統的な器の形を出発点にしながら、実際に使う道具とは思えない構造へ変化させているのです。

開催場所:Yossi Milo Gallery(米国ニューヨーク)
会期:2026年10月22日(木)〜2027年1月9日(土)

ここがポイント

壺は本来、物を入れるための器です。しかしサイードの作品では、器の形が伸び、つながり、複雑な彫刻へと変化しています。表面には古代エジプトやイスラム美術の文様が使われていますが、全体の姿は未来の機械や未知の生物にも見えます。古い技法をそのまま再現するのではなく、その技法を使ってまだ存在しない形を生み出しているのです。伝統と実験が一つの作品の中に共存しています。

参考:Yossi Milo Gallery「Ibrahim Said: Shaping Time」公式展覧会案内/Colossal(2026年10月22日)

Yossi Milo Galleryの公式展覧会ページ →

9|美術館の「作品をしまう場所」が主役に?―ポンピドゥーの新施設で特別公開が始まる

フランス・パリ郊外のマシーで、ポンピドゥー・センターの新施設「Centre Pompidou Francilien – fabrique de l’art」が一般向けに公開されています。正式開館は2027年春ですが、今年10月には3回の週末特別公開「Prélude !」が企画されています。

建物の規模は約3万平方メートル。そのうち約1万3,000平方メートルが作品の収蔵エリア、約4,000平方メートルが保存修復のための作業エリアです。収蔵室や修復室の大部分は一般公開されませんが、来場者は建築や展示空間、関連企画を通じて施設の役割を知ることができます。

本日10月24日と25日は、「自然と地域」がテーマ。布と身体の動きを使ったパフォーマンスや、昆虫を撮影するための制作過程を紹介する催しなども予定されています。

開催場所:Centre Pompidou Francilien – fabrique de l’art(フランス・マシー)
会期:特別公開は2026年10月17・18日、24・25日、31日・11月1日/正式開館は2027年春予定

ここがポイント

美術館というと、展示室に並ぶ名画や彫刻を思い浮かべます。しかし、実際には作品を運び、保管し、修復するための場所が欠かせません。今回の新施設では、その普段は表に出にくい仕事が建物の大きな役割を担っています。さらに、一般向けには自然素材を使った制作体験やダンス、映像なども用意されました。作品を見せる場所だけではなく、作品を未来へ残す場所も、美術館の重要な一面なのです。

参考:Centre Pompidou「Prélude !」公式プログラム/The Art Newspaper(2026年10月23日)

Centre Pompidouの公式プログラム →

10|薄いZINEの裏に、何百枚もの試し刷りと徹夜がある―自主制作の「見えないコスト」を展示

米国マサチューセッツ州ケンブリッジのGallery 263で、ZINEをテーマにした展覧会「At What Cost」が開催されています。10月23日には作家たちの活動を紹介するレセプションが行われました。

ZINEとは、作家が自分の手で企画・編集・制作する小さな自主出版物です。今回は、アンドレア・カボチャン、クリステン・ヘアロルド、ケイト・モルトビー、アンジェラ・ウェイの4人が参加しています。

展覧会が注目するのは、完成した冊子だけではありません。何百枚ものスケッチや試し刷り、限られた印刷機材を使うための移動、制作に費やした時間や費用など、本をつくるまでの過程にも光を当てます。

作品をつくる喜びと、その裏にある地道な作業を、同じ場所で考える企画です。

開催場所:Gallery 263(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)
会期:2026年10月9日(金)〜11月8日(日)

ここがポイント

ZINEは小さくて手軽な出版物に見えますが、実際には印刷、製本、紙の選択、予算の調整など、たくさんの作業が必要になります。今回は完成した本だけでなく、その裏側にある試行錯誤を見せることが特徴です。リソグラフ印刷機を使うために移動したり、何度も試し刷りを重ねたりする時間も、作品の一部なのかもしれません。自主制作の魅力を、つくる人の手仕事や生活から考えられる展示です。

参考:Gallery 263「At What Cost」公式展覧会案内

Gallery 263の公式展覧会ページ →

まとめ

今回のニュースでは、身近な材料や風景を、思いもよらない方法で作品に変える試みが目立ちました。

東京では、実在する人物の顔を巨大化して空に浮かべる《まさゆめ》が再び実施されます。表参道では、絵具が乾燥する力や、ピアノ演奏によって生まれる動きを絵画へ変える作家が登場しました。松戸では何重にも張った糸に映像を投影する芸術祭が開かれ、銀閣寺では香りを味わう日本の伝統文化を工芸鑑賞へ取り入れます。六本木では日本の蚊帳生地とフランスの技法を組み合わせた衣装が展示されます。

海外では、大きすぎて展示できなかった絵画のために専用の建物がつくられました。ロンドンでは、ガラスと光によって見えない風が姿を現し、ニューヨークでは古代の陶芸技法が未来的な造形に生まれ変わります。

さらに、ポンピドゥーの新施設や小さなZINEの展覧会は、作品が完成するまでの仕事、そして完成した作品を保存する仕事にも目を向けさせてくれます。

美術は、目の前にある完成品だけではありません。何を材料に選び、どうつくり、どう残すのか。その過程にも、たくさんの発見が隠れています。