美術館や展覧会のニュースだけでなく、漫画、イラストレーション、ゲーム制作、スケートボード、実験映像、写真、工芸、空間デザインまでを網羅!
+び。STATIONでは、国内外で起きているアートの動きから、気になるニュースをピックアップ。2026年10月22日は、国内6本・海外6本の計12本をお届けします。
「何が起きたのか」だけでなく、どこが面白いのか、なぜ注目したいのかも一緒に見ていきましょう。
国内のART NEWS
1|「きいちのぬりえ」は現代のかわいいの原点?―未公開の肉筆画34点が渋谷に集結
東京・渋谷のNANZUKAで10月24日、蔦谷喜一の個展「曽田コレクション」が開幕します。戦後の子どもたちに親しまれた「きいちのぬりえ」の作者が残した、これまで一般公開されていなかった肉筆画34点を紹介する展覧会です。
展示されるのは、蔦谷が1985年頃から日本画の技法で制作した「童女百態シリーズ」。絹に描かれた少女たちは、大きな瞳、丸い顔、三頭身ほどの身体など、現在の漫画やキャラクターにも通じる特徴を持っています。
蔦谷は日本画を学び、1947年には駄菓子屋で売られる「きいちのぬりえ」が大流行しました。今回の作品は、収集家の曽田大資が作家の制作現場に通いながら集め、長年保管してきたものです。
開催場所:NANZUKA(東京都渋谷区)
会期:2026年10月24日(土)〜11月28日(土)
ここがポイント
大きな瞳と小さな身体を持つ少女のイラストは、現代では見慣れた表現です。しかし、現在の漫画やアニメのキャラクターが定着する以前にも、そのような姿を描き続けた作家がいました。蔦谷の作品では、日本画の技法と、大衆向けのぬりえの表現が結びついています。懐かしい昭和の絵として眺めるだけでなく、現代の「かわいい」がどこから生まれたのかを考える入口になる展覧会です。
参考:NANZUKA「蔦谷喜一個展 ~曽田コレクション~」公式展覧会案内
2|絵が描けなくてもゲームはつくれる?―インディーゲームの「見た目」を考える6つの制作講座
ゲームのグラフィック制作に特化したオンラインイベント「GAME GRAPHICS JAM」が、11月7日に初開催されます。主催するボーンデジタルが10月21日に発表しました。
登壇するのは、インディーゲームを制作するクリエイター6組。大きな制作予算を使わずに画面の魅力を高める方法や、専門のデザイナーではない人がゲームの絵をつくる考え方などを紹介します。
プログラムには、ゲーム『オメガフェネクス』のカットシーン制作、サイケデリックな色彩と2000年代風のサイバーパンク表現、『ghostpia』『アンリアルライフ』のパッケージやビジュアル設計なども登場。
ゲームの紹介イベントではなく、色、構図、キャラクター、世界観をどのようにつくるのか、制作する側の技術に焦点を当てた企画です。
開催場所:オンライン配信
日時:2026年11月7日(土)11:00〜19:00
ここがポイント
インディーゲームでは、少人数で企画、プログラム、グラフィックまで担当することがあります。専門のイラストレーターがいなくても、色の選び方や画面の構成によって、作品独自の雰囲気をつくることは可能です。今回は完成したゲームを遊ぶのではなく、その見た目がどう設計されたのかを学ぶ企画。ゲームの世界観をつくる仕事が、イラストレーションやグラフィックデザインと深くつながっていることが分かります。
参考:株式会社ボーンデジタル 公式発表(2026年10月21日)
3|スケートボードで街を滑ると、数学が見えてくる?―京都で異色の彫刻家が個展
京都市京セラ美術館で2027年2月から、フランスのアーティスト、ラファエル・ザルカによる特別展「幾何学、時間、スケートボード」が開催されます。京都市が10月16日に詳細を発表しました。
ザルカは、数学や幾何学、建築、彫刻などを横断して制作する作家です。なかでも重要な出発点となっているのが、本人が親しんできたスケートボード。街の段差や斜面、曲面を滑る行為から、建築の中に隠れた図形や構造を見つけ出します。
今回の展覧会は、日本で初めての本格的な個展です。彫刻や写真、映像、ドローイングなどに加え、2026年春から夏にかけて京都に滞在し、調査・制作した新作も紹介する予定です。
開催場所:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ(京都府京都市)
会期:2027年2月6日(土)〜5月5日(水・祝)
ここがポイント
スケートボードをする人は、階段や手すり、街角の段差を、歩行者とは違った視点で眺めています。普通なら通り過ぎる場所が、滑るための曲線や角度を持った空間に変わるのです。ザルカは、そうした身体の経験を幾何学や彫刻へ結びつけてきました。都市の形を知る方法は、定規で測ることだけではありません。身体を動かすことで発見できる数学もあるのだと感じさせる表現です。
参考:京都市「特別展『ラファエル・ザルカ:幾何学、時間、スケートボード』の開催について」(2026年10月16日)
4|地下366メートルのトンネルを音の作品に!―喜界島で初の「さんごの島科学芸術祭」
鹿児島県の喜界島で10月30日から、初開催となる「さんごの島科学芸術祭2026」が始まります。隆起サンゴ礁によって形成された島の地形や、長い年月をかけて蓄積された環境データを、映像や音、光の作品へと変える芸術祭です。
会場となるのは、美術館ではなく島内各所。宮尾昇陽はスギラビーチの隆起サンゴ岩に映像を投影し、立石従寛は全長366メートルの地下ダムトンネルで音響作品を展開します。
さらに八木夕菜は、海と陸の記憶をたどる作品《島が海だったとき》を集落の公民館で発表。山崎敦子はサンゴの化学的な循環を視覚化する作品を展示します。
研究者が調べてきた島の歴史を、作家が新しい感覚の体験へと変えていく企画です。
開催場所:スギラビーチ、第一地下ダムトンネルほか喜界島内各所(鹿児島県大島郡喜界町)
会期:2026年10月30日(金)〜11月8日(日)
ここがポイント
海岸にあるサンゴ岩や地下水の通り道は、普段は美術作品として鑑賞するものではありません。しかし、そこに映像や音を加えると、何万年もかけて形成された土地そのものが表現の舞台になります。特に、地下366メートルのトンネルを使った音響作品は、普段は入る機会の少ない場所を異なる感覚で体験できそうです。自然を模した作品をつくるのではなく、自然の中に作品を生み出す発想が魅力です。
参考:NPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所 公式発表(2026年10月15日)
5|40年前の漫画を作者自身が描き直す!―『ガロ』のニューウェーブが大阪で再起動
大阪・心斎橋のVINYL UNDERGROUNDで10月21日、漫画家・イラストレーターの奥平イラによる展覧会が開幕しました。取り上げるのは、1980年代の雑誌『月刊漫画ガロ』を中心とした、漫画とイラストレーションの仕事です。
今回の特徴は、当時の作品をそのまま並べるだけではないこと。奥平自身が1980年代に描いた原稿をデジタル化し、修正や加筆を施した「リマスター作品」を展示しています。
奥平は1979年に『ガロ』で漫画家としてデビュー。その後は広告や音楽、ファッションなどにも活動を広げ、独特の線と大胆な色彩で知られるようになりました。
会場では、当時の漫画や表紙絵を収録した図録も紹介。過去の作品を、作者自身が現在の視点からもう一度つくり直す企画です。
開催場所:VINYL UNDERGROUND(大阪府大阪市)
会期:2026年10月21日(水)〜11月8日(日)/原則月・火曜休業
ここがポイント
漫画の復刻では、古い原稿をできるだけ元の姿に戻すことが一般的です。しかし今回、奥平は自分の作品に再び手を入れています。制作当時にはできなかったことや、現在だから見えてくる表現があるのかもしれません。1980年代の『ガロ』が持っていた実験的な精神を、懐かしいものとして保存するだけではなく、現在進行形の創作へとつなげています。作者自身による「セルフリメイク」としても興味深い展示です。
参考:株式会社ケンエレファント 公式発表(2026年10月13日)
6|AIがつくる「存在しなかった昭和の記憶」―草野絵美の大型個展が飯能で開催へ
埼玉県飯能市のHYPER MUSEUM HANNOで11月14日から、アーティスト・草野絵美の大型個展「エンド・オブ・ノスタルジア」が開催されます。10月20日に展覧会の詳細が発表されました。
草野が取り組んでいるのは、AIを使って「ありえたかもしれない過去」をつくる表現です。竹の子族、ギャル、デコラ、ゴシック・ロリータなど、日本のストリートカルチャーを手がかりに、現実には存在しなかった記憶のようなイメージを生み出します。
会場にはテレビモニターを積み上げた《Memory Metabolism》、立体作品《Mementoid》などの新作が登場。《Ornament Survival》シリーズからは未発表作を含むプリント約25点も展示します。
開催場所:HYPER MUSEUM HANNO(埼玉県飯能市)
会期:2026年11月14日(土)〜2027年1月31日(日)
ここがポイント
昔の写真を見ると、自分が体験していない時代でも懐かしく感じることがあります。草野の作品は、その感覚をさらに複雑にします。描かれるのは、どこかで見たことがあるようで、実際には存在しなかった風景や人物です。AIは過去を正確に保存するためだけの技術ではなく、ありえたかもしれない世界を想像する道具にもなります。懐かしさとは何なのか、記憶はどこまで信用できるのかを問いかける展覧会です。
参考:メッツァビレッジ/HYPER MUSEUM HANNO 公式発表(2026年10月20日)
海外のART NEWS
7|ガーナの廃工場をパリの美術館に再建!―イブラヒム・マハマの巨大展が本日開幕
フランス・パリのカルティエ現代美術財団で10月22日、ガーナ出身のアーティスト、イブラヒム・マハマによる展覧会「The Harvest Season」が開幕します。
大きな見どころは、ガーナにあった古い瓶工場の設備を、美術館の中に再構成したインスタレーションです。錆びた鉄骨や大量の緑色の瓶、飲料用のケースなどが並び、かつての製造業や流通の歴史を浮かび上がらせます。
マハマは2024年に、この工場を取得しました。廃棄されていく産業の痕跡を作品へ取り込み、失われつつある地域の記憶を別の形で残そうとしています。
さらに今回は、ガーナを中心とする9組の作家・集団の仕事も紹介。自分の作品だけでなく、地域の作家たちへ展示の場を広げています。
開催場所:カルティエ現代美術財団(フランス・パリ)
会期:2026年10月22日(木)〜2027年2月28日(日)
ここがポイント
工場が閉鎖されると、建物や機械は古くなったものとして撤去されることがあります。しかし、そこには働いていた人々の記憶や、地域の産業の歴史が残っています。マハマは、その痕跡を美術館へ移すことで、廃棄物に別の役割を与えました。過去をただ懐かしむのではなく、その材料から新しい未来をつくろうとする姿勢が特徴です。一人の作家による展覧会でありながら、地域全体の表現へ視野を広げている点にも注目です。
参考:The Guardian「Why has a crumbling bottle plant been rebuilt in Paris?」(2026年10月21日)
8|プリンターの中でインクはどう飛んでいる?―顕微鏡写真の世界大会で意外な作品が1位に
顕微鏡写真の国際コンテスト「Nikon Small World」の2026年受賞作品が、10月21日に発表されました。第52回となる今回は、ドイツ・ケルンを拠点とする実験写真家、オーレ・ビールフェルトが1位を受賞しました。
撮影したのは、インクジェットプリンターが紙に文字や画像を印刷する瞬間です。ノズルから飛び出した極小のインク滴を、顕微鏡の対物レンズを使って捉えています。
ビールフェルトは専用の撮影装置を自作。普段はプリンターの内部に隠れて見えない動きを、まるで抽象絵画のような写真へと変えました。
2位には花粉を付けたハエトリグモ、3位にはマウスの脳の神経細胞を捉えた作品が選ばれています。
ここがポイント
私たちは毎日のように印刷された文字や写真を見ていますが、インクが紙へ届くまでの一瞬を意識することはほとんどありません。今回の受賞作は、身近なプリンターの仕組みを、見たことのない風景として写し出しました。顕微鏡写真は科学的な記録であると同時に、形や色、構図によって鑑賞できる表現でもあります。遠い宇宙ではなく、机の上の機械にも、まだ知らない視覚の世界があるのです。
参考:Nikon Instruments Inc. 公式発表(2026年10月21日)
9|「自分の故郷」はどこにある?―韓国の国際ビデオアート祭で4人が記憶を映像に
韓国・釜山で開催中の第20回釜山国際ビデオアートフェスティバルでは、10月19日からテーマ展示「Routes of the Roots」が始まっています。
今回の出発点となっているのは、韓国から海外へ養子として迎えられた人々の経験です。生まれた場所、育った場所、家族の記憶、話す言語など、「自分のルーツ」を形づくるものは一つではありません。
参加するのは、Mirae kh Rhee、Skye Jin、Sara Sejin Chang、Uma Feedの4人です。
例えばRheeの《If I Had Four Mothers》は、会えない母へ宛てた映像の手紙。映画監督クリス・マルケルが撮影した韓国女性の写真を手がかりに、失われた記憶や、他人の写真を誰がどのように扱うのかを考えます。
開催場所:Space Heem(韓国・釜山)
会期:2026年10月19日(月)〜25日(日)/テーマ展示の期間
ここがポイント
生まれた場所を知っていても、そこで暮らした記憶があるとは限りません。言葉や文化、家族との関係が異なれば、「故郷」は簡単には説明できないものになります。今回の映像作品は、一つの答えを示すのではなく、さまざまな記憶が重なり合う様子を描きます。また、他人が撮影した古い写真を作品に使うとき、誰の視点がそこに含まれているのかという問題も生まれます。映像表現を通して、個人と社会の歴史を考える企画です。
参考:Busan International Video Art Festival 2026 公式テーマ展示案内・公式日程
10|アフリカの若者たちは「写真の中で何者になりたかった?」―サンレ・ソリーのカラー写真展
英国ロンドンのフォトグラファーズ・ギャラリーで、ブルキナファソの写真家サンレ・ソリーの展覧会「Colour Years」が開催されています。
ソリーは1960年代から、故郷ボボ・ディウラッソでスタジオ写真や街の人々の姿を撮り続けてきました。初期の白黒写真で知られていますが、今回の展覧会では1980年代半ば以降のカラー作品に注目しています。
写っているのは、家族や恋人、友人たち、商店の人々。服装やポーズ、背景の選び方には、写真を撮られる人自身が「どのように見られたいか」を考えた痕跡があります。
展示では、保存されてきたネガから修復されたカラー写真に加え、地元の音楽グループを撮影したレコードジャケットなども紹介します。
開催場所:The Photographers’ Gallery(英国・ロンドン)
会期:2026年10月14日(水)〜2027年2月21日(日)
ここがポイント
写真館で記念写真を撮るとき、人は服を選び、姿勢を整え、ときには普段とは違う自分を演じます。ソリーの写真にも、撮られる人たちが自分の姿を楽しんでいる様子が残っています。写真は撮影者だけの表現ではなく、被写体と一緒につくるものでもあるのです。今回は、よく知られた白黒作品とは異なるカラー写真に注目することで、独立後のブルキナファソで変化していったファッションや暮らし、若者文化を見ることができます。
参考:The Photographers’ Gallery「Sanlé Sory: Colour Years」公式展覧会案内
The Photographers’ Galleryの公式展覧会ページ →
11|重そうな石のバーが実は持ち運べる!?―ロンドンからパリへ移動するデザイン作品
フランス・パリで10月21日から24日まで、移動式のバーを使ったデザインプロジェクト「The Limen Bar」が紹介されています。
企画したのはデザインギャラリストのマックス・ラドフォードと、シャーロット・テイラー、ポーリーヌ・ルプランスによるデザインスタジオCLLC。ロンドンのフリーズ・ウィークで披露された空間を、今度はパリへ移動させました。
バーの外観は重い石や金属を思わせますが、実際には軽量で、組み立てや解体、運搬がしやすい構造です。家具や照明、グラスまで統一された造形で設計されています。
照明にはPS Lab、音響にはMateo Garcia Audioなどが参加。人が飲み物を受け取り、腰を掛け、会話をする場所そのものをデザインの作品にしています。
開催場所:10 Villa Riberolle, 75020 Paris(フランス・パリ)
会期:2026年10月21日(水)〜24日(土)
ここがポイント
美術作品を展示するとき、普通は作品を見る場所と、休んだり会話したりする場所が分かれています。しかしThe Limen Barでは、人が集まり、飲み物を飲み、会話する行為までが作品の一部になります。さらに、重く見える材料を軽い構造で再現することで、空間そのものを別の都市へ移動できるようにしました。家具を展示するのではなく、家具によって人の行動が生まれる場所をつくる。デザインの役割を広げる試みです。
参考:Wallpaper*「The Limen Bar by CLLC is a new creative approach to the genre」(2026年10月20日)
12|椅子を触ると音が鳴る!―次世代デザイナー4組がパリで見せる不思議な家具
パリのHôtel de Maisonsで10月20日、AppleとDesign Miamiによる「Designers of Tomorrow」の展示が始まりました。2026年は4組の新進デザイナーが参加し、「presence(存在・そこにいること)」をテーマに作品を制作しています。
ブルックリンのイザベル・ローワーが発表した《Padded Chair 1860》は、椅子の縁に陶製のビーズを飾った作品。触れるとビーズが音を立て、座るという何気ない行為に意識を向けさせます。
韓国のデザイナー、イ・ユンジョンは約5000枚の薄い木材を積み重ね、使い古した鉛筆を留め具にしたテーブル兼照明を制作しました。
また、Parafernaliaの作品《MonoAmbiente 1》は、閉じた状態から開くことで椅子とテーブルが現れ、二人が向き合える空間へと変化します。
開催場所:Hôtel de Maisons(フランス・パリ)
会期:2026年10月20日(火)開幕/終了日は公式発表で確認できず
ここがポイント
家具は、座る、置く、照らすといった機能を果たすためにつくられます。しかし今回の作品では、その機能に小さな驚きが加えられています。椅子に触れると音が鳴り、古い鉛筆が家具の構造を支え、閉じた物体が二人で使う場所へと変わります。日常の道具を見慣れない形にすることで、私たちは普段、どれだけ無意識に物を使っているのかに気づかされます。便利さだけではない家具の魅力を感じられる企画です。
参考:Apple Newsroom「Apple unveils the 2026 Designers of Tomorrow」(2026年10月20日)
まとめ
今回のニュースには、身近なものを違う角度から見直す表現が数多く登場しました。
「きいちのぬりえ」を美術史の中から見つめ直す展覧会では、現代の漫画やキャラクターにつながる表現の源流をたどります。ゲーム制作のイベントでは、画面の色や構図をつくる技術が主役になり、スケートボードに親しむ彫刻家は、街の中に隠れた幾何学を発見します。
一方、鹿児島の喜界島では、海岸のサンゴ岩や地下トンネルそのものを作品の舞台にします。大阪では40年前の漫画を作者自身が描き直し、飯能ではAIによって存在しなかった過去の記憶がつくられます。
海外でも、廃工場の設備が巨大な現代美術となり、普段は見えないインクの動きが顕微鏡写真として評価されました。さらに、映像で故郷の記憶をたどる作家たちや、触れると音が鳴る椅子など、さまざまな表現が生まれています。
美術は、特別な場所にある作品だけではありません。古い漫画、印刷機、街の段差、家具、誰かの記憶まで。見方を変えることで、思いがけない創作の入口が現れるのです。
