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日刊アートニュース用アイキャッチ画像「Daily ART PICKs +び。ステーション」

最新ART NEWS 13選【2026年10月19日】|+び。STATION

美術館や展覧会のニュースだけでなく、デザイン、写真、音楽、実験映画、AI、パブリックアート、食文化の造形表現までを網羅!

+び。STATIONでは、国内外で起きているアートの動きから、気になるニュースをピックアップ。2026年10月19日は、国内8本・海外5本の計13本をお届けします。

「何が起きたのか」だけでなく、どこが面白いのか、なぜ注目したいのかも一緒に見ていきましょう。

国内のART NEWS

1|強く握ると潰れてしまう?―「やわらかい積み木」が若手デザイン賞の最高賞に

東京ミッドタウンは10月16日、39歳以下のデザイナーやアーティストを対象とする「TOKYO MIDTOWN AWARD 2026」の受賞結果を発表しました。応募総数1,579件の中から、デザインコンペのグランプリに選ばれたのは、秋本美鈴の《やわらかい積み木》です。普通の積み木といえば、硬くて丈夫なもの。ところがこの作品は、強く握ると潰れてしまうほど柔らかくつくられています。

着想のきっかけは、幼い子どもが味噌汁の豆腐を潰さないよう、手で口へ運んでいた姿でした。触れるものに合わせ、無意識に力を調整する身体の感覚に着目しています。同じアワードのアート部門では、德本道修の映像作品《Wave Goodbye, Waves》がグランプリを受賞。廃炉となる高速増殖炉と、継承者のいない仏壇の「魂抜き」を重ね、失われゆく地域の記憶を問いかけました。受賞・入選作品は会場で展示されています。

開催場所:東京ミッドタウン プラザB1(東京都港区)
会期:2026年10月9日(金)〜11月8日(日)

ここがポイント

《やわらかい積み木》の魅力は、「優しく扱ってください」と言葉で教えるのではなく、物の性質が手の動きを変えるところにあります。壊れやすさに気づけば、自然に力を緩めたくなるはずです。デザインは形や色の美しさだけでなく、人の行動や気遣いを生み出す仕組みにもなります。小さな積み木から、他者への接し方を考えさせる発想です。

参考:TOKYO MIDTOWN AWARD 2026 公式結果発表(10月16日)

TOKYO MIDTOWN AWARDの公式サイト →

2|カプセルホテルの8フロアがアートの舞台に!―「Tokyo Jazz Club」が神保町に誕生

東京・神田錦町の旧カプセルホテルで11月1日から8日間、文化イベント「Tokyo Jazz Club」が開催されます。全8フロアを使い、現代美術、ライブ演奏、パフォーマンス、飲食、交流の場を組み合わせる試みです。会場には展示スペースやステージだけでなく、音に耳を澄ませるリスニングブース、ゲームルーム、個別のカプセルを生かした小さな展示空間も登場します。

発想のもとになったのは、音楽を聴き、語り合い、実験を重ねてきた日本のジャズ喫茶文化。ジャズを音楽ジャンルとして紹介するだけでなく、即興性や共同作業の精神をイベント全体に取り入れます。オクターブの8音、建物の8階、開催期間の8日間を重ね、一日ごとに異なる体験を構成。スイスで始まった「Basel Social Club」の期間限定の空間づくりを受け継ぐプロジェクトです。

開催場所:旧カプセルホテル・神田錦町(東京都千代田区)
会期:2026年11月1日(日)〜8日(日)

ここがポイント

かつて眠るために仕切られていたカプセルが、作品を見たり音を聴いたりする小さな場に変わります。通常の美術館なら展示室を移動しますが、ここでは建物を上下に歩くこと自体が鑑賞体験の一部です。整った展示空間ではなく、用途の決まっていた建築を一時的に別の文化の場所へ変える。ジャズの即興演奏のように、人と表現が出会う仕組みが面白い企画です。

参考:Tokyo Jazz Club 公式案内

Tokyo Jazz Clubの公式サイト →

3|ガラス同士が音を聞き合う?―録音と再生を繰り返す不思議な音楽空間

東京・六本木の「アートかビーフンか白厨」で10月16日、ベルリンを拠点に活動するアーティスト、大城真の個展「Glass Whispers」が始まりました。ガラス製の共鳴器と複数の小さな録音・再生装置を組み合わせ、音が空間を行き来するインスタレーションです。装置はそれぞれ周囲の音を取り込み、別の装置が再生した音にも反応します。まるでガラス同士が伝言ゲームをするように、響きが連鎖していきます。

大城はこれまでも電子回路や日用品を使った演奏装置を制作し、振動や共鳴の性質を探ってきました。今回の展示は2024年に発表した作品から発展したもの。10月31日には、展示中の装置や共鳴器を使ったライブパフォーマンスを予定しています。この演奏を境に機器と空間との関係が変わり、会期の前半と後半では異なる音の連鎖が生まれる構成です。

開催場所:アートかビーフンか白厨(東京都港区)
会期:2026年10月16日(金)〜11月21日(土)/原則日・月曜休み

ここがポイント

この作品には、最初から決められた一曲があるわけではありません。ガラスの響き、装置が拾う物音、室内の環境によって、その場で音が変化します。来場者が出す小さな音も、作品に影響するかもしれません。音楽を演奏家から一方的に届けるものと考えるのではなく、物同士が聞き合う環境として体験する。そんなサウンドアートならではの視点に注目です。

参考:ArtSticker/The Chain Museum 公式展覧会案内

ArtStickerの公式サイト →

4|坂道で球を転がすと絵になる?―横浜の街並みから生まれるグラフィック

横浜の相鉄線星川駅から天王町駅にかけて、10月23日から「保土ケ谷高架下ART LINE 2026」が始まります。鉄道高架下や周辺の広場を舞台に、若手アーティストの新しい表現を紹介する企画です。注目は2002年生まれの國見幸加。坂の多い保土ケ谷の地形に目を向け、センサーを入れた球を坂道で転がし、動きや地形の違いをもとにグラフィックを制作します。街の傾斜そのものが絵を描く道具になるわけです。

参加する「くう」はデジタルと油彩を行き来しながら人物像を描き、スズキタイトは写真のネガとポジを反転させる技法の現代的な意味を探ります。単なる屋外展示ではなく、作家への制作場所の提供や交流支援を行う「PUSH FOR CREATION」の成果発表でもあります。見慣れた生活空間に、普段とは異なる視線を持ち込む試みです。

開催場所:星天qlay、横浜ビジネスパークほか(神奈川県横浜市)
会期:2026年10月23日(金)〜11月23日(月・祝)

ここがポイント

坂道は、普通なら移動するときの景色や不便さとして意識されるものです。ところが、そこを球が転がる動きを記録すると、土地の傾斜が独自の線や図柄に置き換わります。同じ装置でも、違う坂なら別の形が生まれるでしょう。見慣れた街を作者だけの道具として使う発想が魅力です。公共空間の特徴そのものが作品の材料になるという、場所と表現の関係に注目です。

参考:保土ケ谷高架下ART LINE 2026 公式発表(10月16日)

ART LINE 2026の公式サイト →

5|坂本龍一は何を撮っていた?―1980年代の私的な写真を渋谷で公開

東京・渋谷のギャラリーSAIで10月17日、音楽家・坂本龍一の写真展「PHOTO RYUICHI SAKAMOTO」が始まりました。展示されるのは、坂本が1980年代に自らカメラを手にして記録した写真です。世界を舞台に音楽活動を続けていた時期に、旅先の風景や身近な人物、日常に差し込む光など、特別な事件ではない瞬間を撮影していました。華やかな活動記録とは異なる、個人的なまなざしが感じられます。

キュレーションを担当するのは後藤繁雄。坂本龍一エステートの協力のもと、写真を通して音楽家の知られざる一面に触れる構成です。会場では坂本が使用していたポラロイドカメラの機材も展示。ポラロイドは撮影後にその場で像が現れる写真方式で、撮り直しが容易な現在のデジタル写真とは違った偶然性も魅力です。音とは別の表現に残された、坂本の視線をたどります。

開催場所:SAI/RAYARD MIYASHITA PARK South 3F(東京都渋谷区)
会期:2026年10月17日(土)〜11月8日(日)

ここがポイント

写真は、音楽のように時間とともに展開するのではなく、ある瞬間を画面に留めます。その違いを意識すると、坂本が風景のどこに立ち止まり、何を残そうとしたのかを考えたくなります。大きな出来事ではないものへ注意を向ける姿勢は、彼の音楽の聴き方にも通じるかもしれません。音楽家の伝記としてだけでなく、一人の撮影者が何を見ていたのかという視点から楽しみたい展示です。

参考:SAI 公式展覧会案内

SAIの公式サイト →

6|画家の考えをAIに質問できる?―原宿で作品と会話する鑑賞実験

東京・原宿のギャラリーISLANDで10月17日、展覧会「NEW MEDIA / NEW TECHNOLOGY / NEW ARTIST」が始まりました。福岡と韓国・ソウルを経て東京へ巡回した企画で、たかくらかずき、小林健太、伊藤碧、斉木駿介、みょうじ なまえの5人が参加。絵画、彫刻に加えてVR、3DCG、ゲームアートなど、デジタルと現実の境界を横断する作品を紹介します。

特徴的なのが、作家の考え方や制作活動について学習したAIエージェント「ego Graphica」の展示です。来場者はAIとの対話を通じて、作品の背景にある発想を探ることができます。美術館の解説パネルを読むだけでなく、自分が感じた疑問を質問するという鑑賞方法を実験しているのです。ただし、AIが生成する回答は作家本人の発言そのものではなく、学習内容に基づく応答として受け止める必要があります。

開催場所:ISLAND/BLOCK HOUSE 2F(東京都渋谷区)
会期:2026年10月17日(土)〜11月1日(日)/木〜日曜開廊

関連記事|現代アート入門【戦後・現代編】

ここがポイント

作品を前にすると、「なぜこの形なのだろう」「別の方法は考えなかったのだろうか」と質問したくなることがあります。今回の展示は、その疑問をAIとの会話に変えようとするものです。説明を受け取るだけの鑑賞から、自分で問いをつくる鑑賞へ。AIが作家の意図をどこまで伝えられるかという課題も含め、技術そのものを考える入口になる企画です。

参考:ISLAND/ArtFanders 公式発表(10月16日)

展覧会の公式案内 →

7|展示室の次は作家の仕事場へ!―取手で「アトリエバスツアー」

茨城県取手市のアトレ取手で11月19日から、「JamJam展2026」が開催されます。地元で制作を続ける作家の作品を展示するだけでなく、11月21〜23日には実際のアトリエをバスで訪ねる特別なツアーを実施します。取手には東京藝術大学のキャンパスや共同スタジオ、個人の制作場所が点在しています。ツアーでは30人以上が集う共同スタジオのほか、空き店舗や団地の一室を利用した制作現場も巡ります。

会場の「たいけん美じゅつ場VIVA」には、さまざまな表現の作家たちが参加。東京藝大の学生と教員による木工芸ワークショップも予定され、鉋(かんな)で木を削る音や、削りたての木の香りも体験できます。アトリエツアーは事前予約制で、申し込み開始は10月26日の予定です。完成品と制作現場を両方見ることで、作品と作り手の距離を近づけます。

開催場所:たいけん美じゅつ場VIVA、取手市内のアトリエ(茨城県取手市)
会期:展覧会:2026年11月19日(木)〜24日(火)/ツアー:11月21〜23日

ここがポイント

展示室の作品だけを見ていても、それがどんな部屋で、どんな道具を使ってつくられたのかは分からないものです。大きな共同スタジオと団地の一室では、制作環境もきっと異なります。作品の背景にある暮らしや作業の積み重ねまで知れば、完成品の見え方も変わるかもしれません。アートを街の特別な場所だけに閉じ込めず、日常へと開いていく企画です。

参考:たいけん美じゅつ場VIVA 公式案内(10月16日)

たいけん美じゅつ場VIVAの公式サイト →

8|ゴダールのメモやフィルムが新しい映像に―渋谷PARCOで表現が交差

渋谷PARCOは10月16日、11月4日から5日間にわたり「SHIBUYA PARCO ART DAYS」を開催すると発表しました。光、身体、映像、音を横断する今年のテーマは「RESONANCE 呼応」。11月8日に上映されるのは、Soundwalk Collectiveによる《What We Leave Behind / Jean-Luc Godard Archives》です。映画監督ジャン=リュック・ゴダールが残したフィルムやメモ、書物などの資料を撮影し、音を採取して、新しい映像と音響へ再構成した作品です。

一方、アーティストデュオMESは11月4日のナイトイベントでDJ、VJやパフォーマーを招き、クラブカルチャーと美術を交差させます。MESの個展《レイ/RE-I》は関連企画として10月24日から開催。さらに11月7日には若手アーティスト尹苑のパフォーマンス《うまくいく》も予定されています。

開催場所:渋谷PARCO館内各所(東京都渋谷区)
会期:2026年11月4日(水)〜8日(日)/関連展示は別日程

ここがポイント

ゴダールの映画をそのまま上映するのではなく、彼が残した資料から別の映像作品を生み出すところが興味深い点です。映画が完成する前のメモや記録にも、作り手の思考の痕跡があります。それらを新しい音と映像で組み直せば、完成した映画とは違う創作の風景が見えてくるでしょう。過去の作品を保存するだけでなく、次の表現につなげる試みです。

参考:渋谷PARCO 公式特集(10月16日)

SHIBUYA PARCO ART DAYSの公式サイト →

海外のART NEWS

9|たった1分1.44MBで映画をつくる!―超軽量映像だけを集めた映画祭

カナダ・バンクーバーの映画館The Cinemathequeで10月17〜18日、「Small File Media Festival 2026」が開催されました。大きな特徴は、映像データを1分あたり約1.44MBという極めて小さな容量に抑える発想です。今回は世界各地から400件を超える作品が寄せられ、実写、アニメーション、ドキュメンタリー、映像の乱れを利用するグリッチ表現など、多彩な作品が紹介されました。

参加者は古いカメラや手描きアニメ、圧縮技術を駆使し、低容量でも印象的な映像を生み出します。日本のZOU NANによる《The Third Eye》も選出作品に含まれています。現地上映は18日に終了しましたが、10月31日から11月7日にはオンライン版を開催予定。映画祭は、動画を配信するためのデータ量と環境負荷にも問題提起しています。

開催場所:The Cinematheque(カナダ・バンクーバー)/オンライン配信
会期:現地上映:2026年10月17〜18日(終了)/オンライン:10月31日〜11月7日

ここがポイント

スマートフォンや配信サービスでは、映像が高画質であることが当然のように求められます。しかし、この映画祭は容量の小ささを作品の条件として、新しい映像美を引き出そうとしています。画素の粗さや古い撮影機材の特徴も、欠点ではなく表現になるのです。制約があるからこそ生まれる発想に加え、映像の保存や配信に必要な資源について考えられる点も魅力です。

参考:Small File Media Festival 2026 公式プログラム

Small File Media Festivalの公式サイト →

10|差別的な土産物を集める理由とは?―先住民作家に市民から2,000点以上が届く

オーストラリア・シドニーの現代美術館で開かれている先住民アーティスト、トニー・アルバートの展覧会「Not a Souvenir」に、市民から2,000点以上の品々が寄贈されたことが10月17日に報じられました。集めているのは、先住民の姿や文化を、しばしば差別的な固定観念に基づいて描いた古い土産物や日用品です。布巾、灰皿、食器、人形など、かつて日常生活で使われていた品々も含まれます。

アルバートは長年、こうした品物を「Aboriginalia」と呼んで収集してきました。今回の展覧会では、本人のコレクション4,400点以上を紹介。さらに一般市民に寄贈を呼びかけることで、それぞれの品物にまつわる記憶や対話も集めています。展覧会の会期は10月19日までですが、美術館は終了後も寄贈を受け付ける方針です。歴史資料を残すことと、過去の表現を批判的に見直すことを結びつけています。

開催場所:Museum of Contemporary Art Australia(オーストラリア・シドニー)
会期:2026年10月19日(月)まで

ここがポイント

差別的な図柄を含む品物は、捨ててしまうべきものとも思えます。しかし、なぜそれが製造され、長く使われたのかを考えるための歴史資料にもなります。アルバートは、描かれてきた側の立場から、それらの意味を問い直しています。市民の寄贈と個人的な証言を作品活動につなげた点も重要です。美術の収集が社会の記憶と向き合う場になることを示しています。

参考:The Guardian(10月17日)

The Guardianの報道記事 →

11|映画監督が美術展をつくるとどうなる?―写真と詩とダンスを映画のようにつなぐ

フランス・パリで10月21日から、映画監督アリス・ディオップによる展覧会「Geste de Consolation」が開催されます。Miu Miuが企画し、Art Basel Parisのパブリックプログラムとして公開するものです。ディオップは、黒人女性が美術史や社会の中でどのように描かれてきたかという問題を出発点に、写真、映画、彫刻、詩、ダンス、音楽を組み合わせた空間を構想しました。

来場者は4つの空間を移動しながら作品と出会います。冒頭にはザネレ・ムホリの写真、別の部屋にはメアリー・リー・ベンドルフの図柄を用いたカーペットや書籍を配した空間。文学作品の朗読、ダンス、音楽演奏も行われ、最後にはシモーヌ・リーによる高さ約5メートルのブロンズ彫刻《Sentinel (Mami Wata)》が登場します。映画の場面をつなぐように、鑑賞者の歩く順番を考えた展示です。

開催場所:Palais d’Iéna(フランス・パリ)
会期:2026年10月21日(水)〜25日(日)

ここがポイント

映画では、どの場面をどの順番で見せるかによって、観客の感じ方が変わります。この展覧会でも、写真を見て、詩を聞き、踊る身体に出会う体験の順番が重要になります。展示室そのものを一本の映画のように構成したとも考えられるでしょう。美術、映画、舞台を区切らず、複数の表現をひとつの物語へと組み立てる方法が見どころです。

参考:Miu Miu 公式プロジェクト案内

Miu Miuの公式サイト →

12|ゼリーが宮殿や海の怪物になる!?―ヴィクトリア朝の型でつくる食べられる造形

英国のカルチャーメディアCreative Boomは10月15日、ヴィクトリア朝時代の古いゼリー型を使って装飾的なゼリーを制作するキャロライン・トレムレットの活動を紹介しました。彼女は普段、法律事務所向けのビジネスコンサルタントとして働いています。収集するのは、王冠や城、星、松ぼっくり、海の怪物などの模様を持つ銅や陶器の型。かつて英国の食卓を飾った道具を、現代の色彩とともによみがえらせています。

出発点は2005年に手に入れた星形の古い型でした。長く型を収集していましたが、その後、実際にゼリーをつくり、完成品の写真や揺れる映像をSNSで公開するようになります。細かな模様を崩さず取り出すため、冷却や型への油脂の塗布など、古くからの技法も試しています。透き通った色の層や、取り出した瞬間の造形も楽しめる活動です。

ここがポイント

ゼリーは食べ物ですが、型から取り出せば柔らかい立体作品にもなります。昔の職人が金属や陶器に刻んだ複雑な模様が、透き通るゼリーに移されると、まったく違う表情が生まれます。しかも作品は時間とともに揺れ、最後には食べられるもの。古い道具を博物館で眺めるだけでなく、再び使うことで工芸の面白さを伝える、少し風変わりな試みです。

参考:Creative Boom(10月15日)

Creative Boomの紹介記事 →

13|23個のゴールが実る「バスケットボールの木」―本当に遊べる巨大彫刻

米国ノースカロライナ州ローリーのDix Parkで10月7日、キューバ出身のアーティスト、アレクサンドル・アレチェアによる彫刻《Orange Functional》が公開されました。高さ約7メートルのオレンジ色の樹木を思わせる構造体で、枝の先には23個のバスケットボール用ゴールが取り付けられています。眺めるだけの作品ではなく、公園を訪れた人は実際にボールを投げて遊べます。

アレチェアは、もともとこの発想を水彩画として形にしました。初期の彫刻は美術館で触れられない作品でしたが、人々が遊びたがる姿を見て、実際に使える構造へ発展させました。今回の公園版も、来場者が自分で狙うゴールを選ぶ仕組みです。作者はその選択を、人生で決断する行為にも重ねています。遊びと公共美術を結びつけた、親しみやすい作品です。

開催場所:Dix Park・Flowers Field(米国ノースカロライナ州ローリー)
会期:2026年10月7日(水)から公開

ここがポイント

普通のバスケットボールなら、狙うゴールはひとつ。しかしこの彫刻には23個ものゴールがあり、どれを選ぶかは参加者に委ねられます。難しい角度を狙うのか、届きやすい位置を選ぶのか。その判断も作品体験の一部です。彫刻はただ見るものという常識を少し変え、体を動かして関わる楽しさを生み出しています。公共の公園だからこそ成り立つ美術の形です。

参考:Dix Park Conservancy 公式発表(10月1日)

Dix Park Conservancyの公式サイト →

まとめ

今日のニュースでは、見慣れたものの役割を少し変えることで、新しい表現が生まれる場面が目立ちました。東京でグランプリを受賞した《やわらかい積み木》は、丈夫であるはずの積み木を柔らかくすることで、触れる人の手つきを変えます。旧カプセルホテルの8フロアを使う「Tokyo Jazz Club」は、眠るための場所を美術と音楽が交わる空間へつくり替えます。

ガラスが互いの音を拾い合うインスタレーションや、坂道を転がる球の動きから生まれるグラフィックも、物や場所を別の視点で捉えた表現です。坂本龍一の写真展では音楽家の静かな視線に出会えますし、渋谷の映像イベントでは、ゴダールの残した資料が次の作品の材料になります。

海外の超軽量映画祭は、画質の向上ではなくデータ容量を制約することで映像の可能性を広げます。ヴィクトリア朝の型を使ったゼリーや、23個のゴールがついた遊べる彫刻も、ものづくりの常識を揺さぶります。一方、先住民の表象を問い直す収集活動や、黒人女性の表現をつなぐパリの展覧会は、作品が社会の記憶や見方に関わることを示しています。美術とカルチャーの境界は、思っているよりずっと自由なのかもしれません。