美術館や展覧会のニュースだけでなく、巨匠と現代作家の対話、作品の保存修復、古代美術の新発見、文化財返還、写真や環境アートの動きまでを網羅!
+び。STATIONでは、国内外で起きているアートの動きから、気になるニュースをピックアップ。2026年10月16日は、国内4本・海外9本の計13本をお届けします。
「何が起きたのか」だけでなく、どこが面白いのか、なぜ注目したいのかも一緒に見ていきましょう。
国内のART NEWS
1|86歳のピカソが約200日で347点を制作―現代作家7人が巨匠の版画を読み直す
京都市の京セラギャラリーで10月16日、展覧会「トラバース:ピカソ『347シリーズ』と現代作家たち」が開幕します。中心となるのは、パブロ・ピカソが86歳だった1968年、約200日間で制作した347点の銅版画。女性、画家とモデル、騎士、サーカス団員など、長年描き続けたモチーフが次々に登場する連作です。
今回は、相澤亮、岡本里栄、鮫島ゆい、NAZE、肥後亮祐、松元悠、Liisaの7人がこのシリーズを調査。それぞれの関心に響いた版画を選び、自作と並べて展示します。絵画や版画にとどまらず、漫画、映像、インスタレーションなど表現方法も多彩。京セラと京都精華大学が共同で開催し、巨匠の作品をただ鑑賞するのではなく、58年後の作家たちが何を受け取り、どう表現し直すのかを見せる試みです。
開催場所:京セラギャラリー(京都府京都市)
会期:2026年10月16日(金)〜11月28日(土)
ここがポイント
ピカソの作品を美術史の資料として並べるのではなく、現代作家が自身の作品で応答する点がユニークです。銅版画の線や構図、物語の断片が、漫画や映像、空間作品へどうつながるのでしょうか。ピカソが「347シリーズ」を制作した1968年は、京都精華大学が開学した年でもあります。時代も技法も異なる作品を見比べることで、過去の巨匠の作品が、現在進行形の創作につながっていく面白さを感じられそうです。
参考:京セラギャラリー 公式展覧会案内
2|消えていく作品はどう残す?―金沢21世紀美術館が「現代美術の保存」を展覧会に
石川県の金沢21世紀美術館で10月31日から、展覧会「今日から明日へ 作品を継承すること」が開催されます。美術館が所蔵する作品を未来に残すため、どのような調査や修復、記録が必要なのかを紹介する企画です。同館のコレクションは4,000点以上。絵画や彫刻だけでなく、映像、音、観客の参加によって成立する作品など、保存方法の異なる表現が含まれています。宮永愛子《waiting for awakening -chair-》は、ナフタリンが少しずつ昇華し、形が失われていく作品です。また、機器の不具合で稼働を停止していたヤノベケンジの作品は、分解点検・整備を経て展示されます。
館内には、調査や保存の過程を紹介する「継承の実験室」も設けられます。
開催場所:金沢21世紀美術館(石川県金沢市)
会期:2026年10月31日(土)〜2027年4月18日(日)
関連記事|【番外編】美術絵画からインスタレーションまで主要潮流をやさしく整理|大人のための現代アート入門【戦後・現代編】
ここがポイント
絵画の保存では、絵具の剥落や支持体の傷みを防ぐことが重要です。しかし、時間とともに姿が変わること自体が作品の特徴だったら、どうすればよいのでしょうか。古くなった映像機器を交換することや、上演作品を別の人が演じることも、作品の意味に関わる場合があります。本展は、作品を昔のまま固定することが、必ずしも保存の正解ではないと問いかけます。完成品だけでなく、それを維持する判断や技術にも注目したい展覧会です。
参考:金沢21世紀美術館 公式展覧会案内
3|宮島の寺院が現代美術の舞台に―Chim↑Pomら4組が「祈りと平和」を表現
広島県廿日市市の宮島にある大聖院で、11月20日からアートプロジェクト「MAFIN 2026」が開催されます。第2回となる今回は、「時の目―普遍的で、久遠の、平和のためのプロセス」をテーマに、Chim↑Pom from Smappa!Group、金沢寿美、久保寛子、イェラシェビッチ・イリヤの4組が参加します。会場の大聖院は、約1,200年の歴史を持つ寺院です。境内に伝わる「消えずの火」は、広島平和記念公園の「平和の灯火」にもつながっています。参加作家は、広島に寄せられる折り鶴、新聞紙、工業製品、日本画の技法など、それぞれ異なる素材や表現を通して、時間や記憶、社会のあり方を考えます。寺院という歴史的な場所で、現代美術がどのような問いを生み出すのかが見どころです。
開催場所:宮島弥山大本山 大聖院(広島県廿日市市)
会期:2026年11月20日(金)〜12月13日(日)
ここがポイント
現代美術の作品は、どこに置かれても同じ意味を持つとは限りません。例えば、白い展示室に置かれた作品と、長い歴史を持つ寺院に置かれた作品では、鑑賞者が感じ取る背景も変わります。宮島には宗教的な歴史があり、広島には原爆の記憶があります。今回の企画では、作品だけでなく、それらの歴史が重なる場所そのものが重要な要素です。一つの答えを示すより、過去から受け継がれてきたものについて考える時間を生み出そうとしている点に注目したい企画です。
参考:MAFIN 2026 公式案内
4|失われた森をアートで取り戻す―環境芸術の先駆者アラン・ソンフィストが東京で個展
東京・東日本橋のギャラリーYumiko Chiba Associatesで10月17日から、アラン・ソンフィストの個展「Echoes of a Vanishing World」が開催されます。ソンフィストは1946年生まれの米国の美術家で、1960年代から環境アートやエコロジカル・アートに取り組んできました。自然の素材を作品に使用するだけでなく、都市開発によって失われた森を再生し、地域の人々とともに保護する活動でも知られています。今回の展覧会では、生物学や地質学、人類の歴史などを横断しながら、自然環境と人間社会の関係を考える作品を紹介します。会場は、同ギャラリーが六本木から東日本橋へ移転した後、最初の個展となる場所です。
開催場所:Yumiko Chiba Associates(東京都中央区)
会期:2026年10月17日(土)〜12月5日(土)
ここがポイント
自然を題材にした絵画は数多くありますが、ソンフィストの活動は自然を描くことだけにとどまりません。都市の中で失われた植生を取り戻し、その土地が持っていた生態系を再生しようとする点に特徴があります。つまり、作品が完成することよりも、その場所に長期的な変化を起こすことが重要になる場合があります。美術を鑑賞するだけでなく、自然環境や公共空間との関わり方を考えるきっかけとなる展覧会です。
参考:美術手帖 展覧会情報
海外のART NEWS
5|約1900年前の肖像画を修復―過去に間違って接合された「口と顎」も元の位置へ
古代エジプトで制作された約1,900年前のミイラ肖像画《Tondo of the Two Brothers》が、修復を終え、初めて国外で展示されることになりました。作品は2世紀頃に制作された円形の肖像画で、2人の男性の顔が描かれています。カイロのエジプト考古学博物館は、ローマの修復専門家らと協力して約3週間の修復作業を実施しました。木製の支持体はシロアリとみられる虫の被害を受け、彩色面にも剥落の危険がありました。さらに、過去の修復で誤った位置に接合されていた、画面右側の人物の口や顎を描いた破片も本来の位置に戻されました。作品は11月5日からローマのアラ・パキス博物館で開催される展覧会に出品される予定です。
ここがポイント
古代の作品では、現在見えている姿が制作当初の姿とは限りません。長い年月の間に破損した部分が失われたり、後世の修復によって別の形に組み立てられたりすることがあります。今回の肖像画は、保存状態を安定させるだけでなく、過去の修復で生じた誤りを正すことにも成功しました。修復とは、傷んだ部分を直すだけの仕事ではありません。作品を調査し、どの部分が本来のものなのかを判断する、美術史研究の一部でもあるのです。
参考:ARTnews JAPAN、2026年10月15日報道
6|住民が自宅前で見つけた石が大発見に―ラムセス2世の巨大彫像をエジプトで発掘
エジプトのベーベイト・エル・ハガル村で、古代エジプトの王ラムセス2世を表したとみられる巨大彫像の一部が発見されました。きっかけは、地元住民が自宅前の土地で作業中、碑文の刻まれた石材を見つけて通報したことでした。エジプト考古最高評議会の調査団が発掘したところ、高さ約1.6メートルの頭部が出土。頭部には上下エジプトの統一を象徴する二重冠が表現されています。近くで見つかった石材にはラムセス2世の王名が刻まれており、像は台座を含めて高さ約8.5メートルに達したと推定されています。さらに別の頭部と胴体の一部も見つかりましたが、こちらが同じ王を表すかどうかは、まだ確定していません。
ここがポイント古代の彫像では、顔立ちだけで誰を表した作品なのかを確定できるとは限りません。
そこで重要になるのが、石材に刻まれた王名や称号です。今回の発見では、ラムセス2世の名前を示す碑文が確認され、少なくとも1体の彫像の人物特定につながりました。一方、近くで見つかった別の彫像については、同じ王の姿である可能性が示されている段階です。考古学では、見つかった場所や周囲の石材との関係も調べながら、失われた作品の全体像を少しずつ明らかにしていきます。
参考:ARTnews JAPAN、2026年10月15日報道
7|返還されたカンディンスキー作品が約60億円で落札―ロンドンの大型競売で最高額に
英国ロンドンのクリスティーズで10月14日、20世紀・21世紀美術などを扱う大型オークションが開催されました。注目を集めたのは、ワシリー・カンディンスキーが1907年に描いた《Das bunte Leben》です。この作品は、ナチス時代にユダヤ人収集家から奪われた美術品をめぐる問題の対象となり、2023年6月に旧所有者ヘートヴィヒ・レーヴェンシュタイン=ヴァイヤーマンの相続人へ返還されていました。今回の落札価格は手数料を含めて3,160万ポンド。約60億円規模の取引となりました。同日に行われた2つの大型競売の売上高は、手数料を含めて合計約2億1,860万ポンドに達しています。返還された作品が、その後どのように市場で扱われるのかを示す事例となりました。
関連記事|「見える世界」を疑い始めた画家たちの美術革命|大人のための西洋絵画入門3【印象派〜レイヨニスム編】
ここがポイント
美術品の価格は、画家の知名度や作品の質だけで決まるものではありません。誰が所有してきたのか、過去に不当な取得がなかったかという来歴も、重要な判断材料になります。ナチス時代に奪われた作品が返還された場合、相続人がそのまま所有することもあれば、売却することもあります。今回の競売は、返還が歴史的な問題の解決であると同時に、作品が再び美術市場へ戻る出発点にもなり得ることを示しています。
参考:The Art Newspaper、2026年10月15日報道
8|パルテノン神殿の彫刻はギリシャに戻るのか?―大英博物館が交互展示を提案
英国の大英博物館を運営する評議員会のジョージ・オズボーン会長が、パルテノン神殿の彫刻群について、ロンドンとアテネで交互に展示する案に改めて意欲を示しました。対象は、紀元前5世紀に制作され、19世紀初頭にギリシャから英国へ運ばれた彫刻群です。大英博物館側は、当時の移動は合法だったという立場を取り、英国の法律によって恒久的な返還が制限されていると説明しています。一方、ギリシャ側は、彫刻はもともと神殿を構成していたものであり、恒久的に返還されるべきだと主張しています。今回の提案でも、所有権をめぐる認識の違いは解消されておらず、交互展示の合意が成立したわけではありません。
ここがポイント
パルテノン神殿の彫刻をめぐる問題は、博物館の役割について長く議論されてきた事例です。世界各地の文化財を一つの場所で展示することには、異なる文化を比較できる利点があります。一方、建築の一部として作られた彫刻を本来の場所から切り離して展示することには、歴史的・文化的な問題もあります。今回の交互展示案は双方の距離を縮める可能性がありますが、ギリシャ側が求める恒久的な返還とは異なります。今後の交渉が注目されます。
参考:The Art Newspaper、2026年10月15日報道
9|消される前の地下鉄アートを記録―ニューヨークのグラフィティ写真800点以上を公開
オランダ・アムステルダムのSTRAAT Museumで、写真家ヘンリー・チャルファントの展覧会「ART IS NOT A CRIME」が開催されています。チャルファントは1970年代から、ニューヨークの地下鉄車両に描かれたグラフィティを撮影してきました。当時の作品は、車両の清掃や塗り替えによって短期間で消されることもあり、写真はその表現を記録する重要な手段でした。彼が残した800点以上の写真は、ニューヨークのグラフィティ文化を知る貴重な資料となっています。展覧会では、一部の写真を地下鉄車両に近い大きさで再現。高さ3メートルを超える展示も設けられています。
開催場所:STRAAT Museum(オランダ・アムステルダム)
会期:2026年10月9日(金)〜2027年3月13日(土)
ここがポイント
グラフィティは、公共空間に描かれるため、いつまでも同じ場所に残るとは限りません。そのため、写真や映像による記録がなければ、制作された作品の多くは失われていた可能性があります。チャルファントの記録は、完成した絵だけでなく、それを描いた人々や当時の都市文化を知る手がかりにもなっています。作品を保存することと、作品が存在した時代を記録すること。その両方が美術史にとって重要であると分かる展覧会です。
参考:STRAAT Museum 公式展覧会案内
10|若手作家の作品を美術館へ―フリーズ・ロンドンで新しい収蔵支援賞が初選出
英国ロンドンのアートフェア「フリーズ・ロンドン」で、若手美術家の作品取得を支援する新しい賞「ダーシャ・シェンクマン・フォーカス・ファンド」の初受賞者が決まりました。選ばれたのは、画家オキキ・アキンフェです。対象となったのは人物画《Fame is a Gun》と、ライトボックス、準備素描を組み合わせた作品群。3万ポンドの基金によって購入され、英国ケンダルのアボット・ホールのコレクションに加わる予定です。このほか、コンテンポラリー・アート・ソサエティによる10万ポンドの基金では、織物や映像、素描など3作品が購入されました。それらはマンチェスターのウィットワース美術館に収蔵される予定で、関係する4組の作家にとって英国の美術館による初収蔵となります。
ここがポイント
アートフェアは作品を売買する場所ですが、美術館にとっては新しい作品や作家と出会う機会でもあります。とくに若手作家の場合、作品が公共の美術館に収蔵されることには、単なる売買以上の意味があります。収蔵によって作品が研究や展示の対象となり、より長い期間にわたって保存される可能性が生まれるからです。今回の基金は、資金提供者、アートフェア、美術館が協力して、次の世代の作品を公共コレクションへつなぐ仕組みとして注目されます。
参考:The Art Newspaper、2026年10月15日報道
11|美術館の外壁を作品に―メトロポリタン美術館が2027年の制作作家2人を発表
米国ニューヨークのメトロポリタン美術館が、2027年に実施する新しい美術作品の委嘱制作に、ダン・ヴォーとサンドラ・ムジンガを選びました。ダン・ヴォーは、美術館の外壁に設けられた4つの壁龕を使って作品を制作する予定です。ヴォーは、ベトナムから難民として移住した自身の経験や、歴史的な物品が持つ意味を作品に取り込んできた美術家です。一方、ムジンガは、美術館の大ホールに設置する作品を担当します。彼女は、アフロフューチャリズムやSF、植民地主義以後の社会などをテーマに活動しています。外壁の作品は2027年9月から、大ホールの作品は同年11月から公開される予定です。
ここがポイント
美術館の展示は、展示室の中だけで行われるものではありません。建物の外壁や玄関ホールのような場所に作品を設置すれば、展覧会を見に来た人だけでなく、建物を訪れる多くの人が作品に出会えます。一方、その場所には建築上の特徴や歴史があり、作品も空間との関係を考えて制作する必要があります。今回の委嘱制作では、歴史や移動、身体といったテーマを扱う2人の作家が、美術館の建築にどのような新しい意味を加えるのかが注目されます。
参考:Hyperallergic、2026年10月15日報道/Genesis公式発表
12|ブラジル初のポンピドゥー・センター、開館が2029年に延期―建設は未着手
フランスのポンピドゥー・センターがブラジル南部に計画している新しい美術館について、開館予定が2029年に延期されたことが分かりました。建設予定地は、イグアスの滝に近いパラナ州フォス・ド・イグアスです。この施設は、実現すれば南北アメリカ大陸で初めてのポンピドゥー・センターの拠点となります。当初の開館予定は2027年でしたが、2028年に延期され、今回さらに1年延びました。現在も建設工事は始まっておらず、施工会社の選定手続きにも遅れが生じています。計画を進めてきたパラナ州では、10月4日の選挙で知事が交代することになりました。新しい州政府のもとでも計画を継続する方針ですが、工事や開館までの具体的な工程が課題となっています。
ここがポイント
大規模な美術館の建設には、建築設計だけでなく、資金調達、行政手続き、収蔵品の管理、運営体制など、さまざまな準備が必要です。海外の美術館が別の国に拠点を設ける場合には、現地の行政との連携も重要になります。今回の延期は、建物の完成予定が変わったというだけでなく、政治や行政の変化が文化施設の計画に影響することを示しています。美術館が実際に開館するまでには、作品を集めることとは異なる、多くの調整が必要なのです。
参考:The Art Newspaper、2026年10月15日報道
13|美術品を運ぶ箱まで変わる?―EUの新しい包装規則がアート業界に影響
欧州連合(EU)で、包装材の廃棄物削減と再利用を進める新しい規則が、2026年8月12日から適用されています。この規則は、一般商品の包装だけでなく、美術品を国境を越えて輸送する際の梱包にも関わるものです。絵画や彫刻を移動させる際には、衝撃や湿気から作品を守るため、木箱、緩衝材、プラスチックなど、さまざまな材料が使われます。今後は、包装材のリサイクルしやすさ、再利用の仕組み、材質の表示などについて、段階的に基準が強化されます。欧州委員会は、2030年までにすべての包装材をリサイクル可能にすることなどを目標に掲げています。美術館やギャラリー、オークション会社にとっても、輸送方法の見直しが課題となりそうです。
ここがポイント
美術品の輸送では、何よりも作品を傷つけないことが優先されます。しかし、毎回新しい梱包材を使っていれば、大量の廃棄物が発生する可能性があります。そのため、作品を安全に守りながら、箱や緩衝材を繰り返し使える仕組みが重要になります。今回の規則は、作品そのものではなく、作品が世界を移動する際の環境負荷に目を向けるものです。美術を未来へ残すことと、地球環境を守ることを両立させるための、新しい課題といえます。
参考:欧州委員会 公式発表/The Art Newspaper、2026年10月15日報道
まとめ
10月16日のニュースからは、過去の作品を新しい視点で捉え直すことと、美術を未来へ残すことの両方の面白さが見えてきました。
ピカソが86歳で制作した「347シリーズ」に現代作家7人が応答する京都の展覧会は、巨匠の作品が現在の創作につながる可能性を示しています。金沢21世紀美術館の展覧会は、時間とともに形が変わる現代美術をどのように継承するのかを問いかけます。古代エジプトのミイラ肖像画の修復や巨大彫像の発見からも、作品の姿や歴史を明らかにするために調査を続ける大切さが伝わります。
一方、カンディンスキー作品の競売やパルテノン彫刻の返還交渉は、美術品を誰が所有し、どこで展示するべきなのかという問題につながります。ニューヨークのグラフィティを記録した写真展からは、消えていく街の表現を記録することの意味も見えてきます。
作品を制作すること、保存すること、所有すること、そして人々に届けること。美術を取り巻くさまざまな仕事や判断に目を向けると、一つの作品から見えてくる世界も広がっていきます。
