本文へ移動
日刊アートニュース用アイキャッチ画像「Daily ART PICKs +び。ステーション」

最新ART NEWS 10選【2026年10月1日】|+び。STATION

美術館や展覧会のニュースだけでなく、アート市場、研究、デザイン、映像、パブリックアートまで。

ここでは、最近発表されたアートニュースのなかから、気になる話題を国内・海外あわせて10本紹介します。

「何が起きたのか」だけでなく、美術を見るうえでどこが面白いのかも、簡単に見ていきましょう。

国内のART NEWS

1|藤田嗣治15点が香港で全点落札。総額6,722万香港ドル

9月28日、サザビーズ香港で藤田嗣治の作品に特化したオークション「The Foujita Lexicon: Works from the Lewis Collection」が開催されました。

出品された15点はすべて落札され、総額は6,722万香港ドル。多くの作品が事前予想を上回る価格で落札されています。

最高額となったのは、1949年に描かれた《Le rêve (Hommage à La Fontaine)》でした。

ここがポイント

藤田嗣治は、日本とフランスの双方で評価されてきた画家です。

まとまった数の作品が一度に出品され、そのすべてが落札された今回の結果は、現在の藤田作品に対する市場での評価を知るひとつの材料になります。

参考:Sotheby’s

2|東京国立近代美術館で「MOMAT秋びより」開催。鏑木清方の重要文化財3点が7年ぶりにそろう

東京国立近代美術館では、9月29日から「MOMAT秋びより」が始まりました。

所蔵作品展では、鏑木清方の《築地明石町》《新富町》《浜町河岸》が7年ぶりに3点そろって展示されています。

このほか、菱田春草や東山魁夷など、日本近代美術を代表する作品も紹介されています。

ここがポイント

美術館というと大型の企画展に注目が集まりがちですが、その館がどんな作品を集め、どのように見せているのかを知ることができるのが「所蔵作品展」です。

今回の取り組みは、コレクションそのものをもっと楽しんでもらおうという試みとしても興味深いものです。

東京国立近代美術館ではこの秋、子どものぬいぐるみが展示室を巡る「ぬいぐるみお泊り会2026」も開催中です。美術館との新しい関わり方については、プラステ号外で詳しく紹介しています。

プラステ号外「美術館に泊まるのは人間だけじゃない!」 →

参考:東京国立近代美術館

3|AI、CG、コマ撮りアニメも。東京都写真美術館「日本の新進作家 vol.23」

東京都写真美術館で9月30日、「ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol.23」が開幕しました。

今回紹介される5人の作家は、写真だけでなく、AI、CG、コマ撮りアニメーションなど、さまざまな技法を使って制作しています。

会期は2027年1月17日までです。

ここがポイント

「写真美術館」という名前から写真だけを扱う場所と思うかもしれませんが、現代の視覚表現では、写真、映像、CG、アニメーションの境界はかなり曖昧になっています。

今回の展覧会は、その変化を実際の作品から見ることができる企画です。

参考:東京都写真美術館

4|美術館全体を“家”に。向井山朋子+高田冬彦の大型展が開催へ

WHAT MUSEUMは9月29日、「WE ARE THE HOUSE―向井山朋子+高田冬彦(居候)」を2027年1月19日から開催すると発表しました。

向井山朋子が大型インスタレーションによって美術館全体を“家”のような空間へ変え、その中に高田冬彦の映像作品が「居候」するというユニークな構成です。

新作《Hammerklavier》なども展示される予定です。

ここがポイント

絵画や彫刻を一つずつ見るのではなく、建物全体に入り込むことで作品を体験する「インスタレーション」。

さらに音楽や身体表現、映像まで組み合わされることで、「美術作品とはどこまでを指すのか」を考えさせてくれる展覧会になりそうです。

参考:WHAT MUSEUM

5|菅井汲、没後30年の大回顧展。日本初公開作品も

広島県立美術館で10月2日から「没後30年 菅井汲」が開幕します。

菅井汲は戦後にフランスへ渡り、国際的な美術界で活躍した日本人画家のひとりです。

展覧会では初期から晩年までの作品を紹介するほか、木枠から外した状態で長く保管されてきた日本初公開作品も展示されます。

さらに、本人が所有していた1973年式ポルシェ・カレラRSも登場します。

ここがポイント

菅井の作品は、初期の東洋的な形を思わせる画面から、より幾何学的で鮮やかな表現へと大きく変化していきます。

ひとりの作家がどのように自分の表現を変えていったのかを、まとまった作品数で見ることができる貴重な機会です。

参考:広島県立美術館

海外のART NEWS

6|未発表の赤チョーク素描、マネ作品の可能性。新たな研究が発表へ

イタリアの個人コレクションにあった、しゃがむ子供を描いた赤チョークの素描について、エドゥアール・マネの作品ではないかとする研究が発表されました。

研究では画風の比較だけでなく、紫外線を使った調査も行われ、薄れていたマネの工房印とみられる痕跡も確認されています。

研究成果は、美術史専門誌『The Burlington Magazine』10月号で発表される予定です。

ここがポイント

ただし、現時点で「新しいマネ作品として完全に確定した」という段階ではありません。

美術史では、作品の形や描き方を比較する研究と、科学調査、来歴調査などを組み合わせながら作者を検討します。

今回の素描は、そのプロセスを知るうえでも興味深い例です。

参考:The Burlington Magazine ほか

7|Studio Museum in Harlem、新館でアーティスト・イン・レジデンスが本格再始動

ニューヨークのStudio Museum in Harlemで10月1日、「A sustained becoming: Studio Museum Artists in Residence 2026」が開幕します。

参加するのはDerriann Pharr、Simonette Quamina、Taylor Simmonsの3人。

新館に設けられたArtist in Residence Centerを使用した最初の世代となります。

ここがポイント

Studio Museum in Harlemは、1969年以来、多くのアフリカ系アーティストをはじめとする若手作家を支えてきました。

完成作品を展示するだけでなく、制作の場所そのものを美術館が提供する「アーティスト・イン・レジデンス」は、現代美術を支える重要な仕組みのひとつです。

参考:Studio Museum in Harlem

8|ジャック・ウィッテン、1980年代だけに焦点を当てた展覧会

ロサンゼルスのHauser & Wirthで9月30日、「Jack Whitten: The Numinous」が開幕しました。

今回はウィッテンの長い活動のなかでも、1980年代に焦点を絞った展覧会です。

ピクセルのような細かな構造を持つ作品や、都市のマンホール、タイヤ跡などを型取りした実験的な作品も紹介されます。

ここがポイント

画家の生涯すべてを見る回顧展とは違い、特定の10年間だけを見ることで、「どのように新しい技法が生まれたのか」を詳しく追うことができます。

後年のウィッテンを特徴づけるモザイクのような表現が、どのように形成されていったのかを知る重要な展覧会です。

参考:Hauser & Wirth

9|ウィリアム・モリス・ギャラリー、12年ぶりに常設展示を大幅刷新

ロンドンのWilliam Morris Galleryが10月3日に再開します。

2012年のリニューアル以来初となる大規模な展示替えで、モリスの家具、壁紙、テキスタイルなどに加え、新たな研究成果や収蔵品も紹介されます。

今回の展示では、女性の活動、南アジアやイスラム美術との関係、環境思想などにも視野を広げています。

ここがポイント

ウィリアム・モリスは「美しい壁紙を作ったデザイナー」というだけではありません。

工芸、社会思想、労働、自然、暮らしなどを結びつけて考えた人物です。

展示の組み替えによって、これまで知られてきたモリス像そのものを見直そうとしている点に注目です。

参考:William Morris Gallery

10|ケント・モンクマン、初の恒久パブリックアートをトロントで公開

クリー系アーティストのケント・モンクマンが9月30日、トロントのBiidaasige Parkで《The Colony》を公開しました。

ブロンズと鋼によってつくられた巨大なビーバーの群像で、Lassonde Art Trailに恒久設置されます。

モンクマンにとって初めての恒久的なパブリックアート作品です。

ここがポイント

モンクマンはこれまで、西洋美術の歴史画を引用しながら、先住民の歴史や植民地主義を問い直す作品を多く制作してきました。

今回は美術館の中ではなく、公園という誰もが利用する場所へ作品を置いています。

「誰が作品を見るのか」「どこで美術を見るのか」という意味でも、パブリックアートならではの面白さがあります。

参考:City of Toronto ほか

あとがき

今週は、藤田嗣治やマネ、菅井汲といった近代美術の話題だけでなく、AI、CG、アニメーション、デザイン、パブリックアートまで、かなり幅広いニュースが集まりました。

美術というと「絵画や彫刻を見るもの」というイメージが強いかもしれません。

けれど現在のアートは、映像やデジタル技術、建築、都市空間、デザインなどともつながりながら広がっています。

+び。STATIONでは、そんな美術の周辺で起きている出来事も含めて、これから定期的に紹介していきます。