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最新ART NEWS 10選【2026年10月5日】|+び。STATION

美術館や展覧会のニュースだけでなく、デザイン、映像、パブリックアート、アート市場までを網羅!

+び。STATIONでは、国内外で起きているアートの動きから、気になるニュースをピックアップ、今回は、2026年10月5日時点の最新情報から10本を紹介します。

『何が起きたのか』だけでなく、どこが面白いのか、なぜ注目したいのかも一緒に見ていきましょう。

国内のART NEWS

1|キャンバス画はどう直す? 日欧の修復家が20年以上の実践を共有

国立アートリサーチセンターは、東京文化財研究所、東京藝術大学との共催で、10月31日に講演会「キャンバス画の修復について」を開きます。登壇するのは、日本で20年以上キャンバス画の修復に携わってきた渡邉郁夫氏と、ヨーロッパで同じく20年以上の経験を持つケイト・シーモア氏。二人は修復の現場だけでなく、材料や制作技術の研究も重ねてきました。絵画修復は傷んだ部分を“描き足す”仕事ではなく、布地である支持体、絵具層、過去の修復履歴などを読み取り、作品を将来へ残すための判断を積み重ねる仕事です。異なる地域で培われた実践を比較できる貴重な機会になります。

開催場所:東京文化財研究所 地下セミナー室
日時:2026年10月31日(土)

ここがポイント

作品を見るときは完成した画面に目が向きますが、その裏側では支持体の変形、絵具の剥落、湿度や温度による劣化など、さまざまな問題が起きています。保存修復は「元通りにする」よりも、作品の状態と歴史を調べ、どこまで手を加えるべきかを考える仕事です。美術館の展示を支える“見えない技術”に触れられる講演です。

参考:国立アートリサーチセンター

国立アートリサーチセンター 公式サイト →

2|日本の「画論」をデータで読み直す 東京文化財研究所が研究フォーラム

東京文化財研究所は10月9日、第1回研究フォーラム「日本の画論の形成と展開―画論テキストデータの活用にむけて―」を開催します。同研究所ではこれまで、日本の画論、画史、画譜を調査・翻刻し、まとまったテキストデータを蓄積してきました。今回のフォーラムでは、その資料を単に読める形にするだけでなく、日本美術史、東アジア美術史、デジタル人文学を横断しながら、新しい研究基盤としてどう活用できるかを議論します。特別講演は河野元昭氏による「日本の画論と坂崎坦」。古い美術文献をデータとして蓄積し、比較・検索できるようにすることで、美術史研究の読み方そのものが変わる可能性があります。

開催場所:東京文化財研究所 地下セミナー室/オンライン(Zoom)
日時:2026年10月9日(金)13:00〜

ここがポイント

「画論」は、絵をどう描くべきか、何を良い絵と考えるかを論じた文章です。作品だけを見ていると分からない、当時の画家や知識人の“ものの見方”が残されています。これらを検索できるテキストデータとして整えると、時代ごとの言葉の変化や中国美術論との関係などを横断的に追えるようになります。美術史とデジタル研究が接近する動きとして注目です。

参考:東京文化財研究所

3|《源氏物語絵巻》から工芸、能まで 京都国立博物館で約250件の特別展

京都国立博物館で10月6日、特別展「源氏物語 王朝のかがやき」が開幕します。紫式部の物語が後世に生み出した絵画、工芸、写本、注釈書、芸能までを幅広くたどる展覧会で、巡回を含め約250件の文化財を紹介。国宝《源氏物語絵巻》をはじめ、藤原定家が校訂した写本、全体像が長く知られなかった《源氏物語絵巻(盛安本)》などが集まります。京都国立博物館で「源氏物語」を主題とする展覧会が開かれるのは約50年ぶり。物語そのものではなく、約千年にわたって人々が物語を読み、描き、飾り、演じてきた「美術の広がり」を見せる構成です。

開催場所:京都国立博物館 平成知新館
会期:2026年10月6日(火)〜11月29日(日)

ここがポイント

『源氏物語』は文学作品ですが、美術史では巨大な“モチーフの供給源”でもあります。同じ場面が絵巻、屏風、香箱、着物、能など別々の表現へ姿を変えていくため、ひとつの物語が時代ごとにどう読み替えられたのかを比較できます。特に《源氏物語絵巻》は場面ごとに展示期間が異なるため、目当ての作品がある場合は出品期間の確認が必要です。

参考:京都国立博物館

京都国立博物館 公式サイト →

4|葛飾応為《吉原格子先之図》が3年ぶり公開 「夜景」の流れから見直す

太田記念美術館では10月6日から、「葛飾応為『吉原格子先之図』 夜景の系譜」が始まります。応為は葛飾北斎の娘で、自身も絵師として活動した人物。《吉原格子先之図》は、遊里の夜を強い光と影の対比で描いた代表作で、今回は3年ぶりの公開となります。展覧会ではこの一作だけを孤立させず、鈴木春信、歌川広重、小林清親らの夜景表現と並べ、江戸から明治、大正へと「夜を描く方法」がどう変化したのかを追います。さらに、これまであまり注目されてこなかった明治末以降の海外向け夜景作品も紹介し、応為の独特な明暗表現を浮世絵史の流れの中で捉え直します。

開催場所:太田記念美術館
会期:2026年10月6日(火)〜12月6日(日)

ここがポイント

電灯のない江戸時代、夜を描くことは「暗く塗ればよい」わけではありません。提灯や室内の灯り、月明かりを使って、何を見せ、何を闇へ沈めるかが重要でした。《吉原格子先之図》はその明暗表現がとりわけ劇的です。他の絵師の夜景と並べることで、応為だけが特殊だったのか、それとも先行・後続する表現とつながっていたのかを見ることができます。

参考:太田記念美術館

太田記念美術館 公式サイト →

5|1600年前の器はこんなに自由だった 東京富士美術館「This is SUEKI」開幕

東京富士美術館で10月3日、「This is SUEKI─古代のカタチ、無限大!」が開幕しました。須恵器は古墳時代に日本で生産が始まったやきもので、その技術は朝鮮半島との交流の中で伝えられ、日本の陶磁器生産の大きな基盤になりました。本展は古墳時代から平安時代まで約500年間に生まれた須恵器を通して、その造形の多様さを紹介します。須恵器というと灰色で素朴な器を想像しがちですが、脚の付いた器、動物や人物を思わせる形、用途を想像したくなる複雑な造形など、形そのものに大きな幅があります。東アジアとの文化交流と日本独自の美意識が、器の形にどう現れたかを見る展覧会です。

開催場所:東京富士美術館 本館・企画展示室1〜4
会期:2026年10月3日(土)〜12月27日(日)

ここがポイント

考古資料は「歴史の証拠」として見ることが多いですが、須恵器は造形物として見てもかなり面白い存在です。技術が伝わったあと、地域や時代によって形が変わり、実用品の枠を超えたような姿も現れます。「古代の人も形を選び、工夫し、格好よさを考えていた」と想像しながら見ると、陶磁史とデザイン史が一気につながってきます。

参考:東京富士美術館

東京富士美術館 公式サイト →

海外のART NEWS

6|シュルレアリスムは「本」でも実験していた MoMAが希少なアーティストブックを特集

ニューヨーク近代美術館(MoMA)で10月4日、「The Surrealist Book: Tomorrow Lives in Mirrors」が開幕しました。シュルレアリスムというと絵画や写真を思い浮かべますが、今回の主役は「本」です。アンドレ・ブルトン、クロード・カアン、サルバドール・ダリ、ポール・エリュアール、マックス・エルンスト、トワイヤンらが関わった希少本を通して、ページ、文章、写真、版画、装丁を組み合わせた実験を紹介します。シュルレアリストたちは、本を作品を載せる容器ではなく、複数の作家が協働し、無意識や偶然性を引き出すための新しい芸術形式として扱いました。

開催場所:The Museum of Modern Art(ニューヨーク)
会期:2026年10月4日(日)〜2027年1月23日(土)

ここがポイント

美術運動を学ぶとき、代表的な絵だけを追うと、その運動が社会へ広がった姿を見落としがちです。シュルレアリスムでは詩人、写真家、画家、装丁家が同じ本に関わり、「読む」「見る」「触る」をひとつにしました。本をひとつの空間として考える発想は、現代のアーティストブックやZINEにもつながります。絵画中心の美術史を少し横へ広げてくれる展覧会です。

参考:The Museum of Modern Art

MoMA 公式サイト →

7|バスキアを「複製」から読み直す 1984年のBlue Ribbon連作11点を核に60点超

プリンストン大学美術館で10月4日、「Basquiat, the Blue Ribbon Paintings, and the Art of Reproduction」が始まりました。中心となるのは、ジャン=ミシェル・バスキアが1984年に制作した11点の「Blue Ribbon」連作。これらがまとまって公に展示されるのは30年以上ぶりです。展覧会は60点を超える作品で構成され、版画やコピー機など「複製する技術」がバスキアの制作にどれほど重要だったかを検証します。彼の画面に繰り返し現れる解剖図、企業ロゴ、王冠、文字断片を、単なる即興的な落書きではなく、既存イメージを取り込み、複写し、再配置する意識的な方法として捉え直す試みです。

開催場所:Princeton University Art Museum(ニュージャージー)
会期:2026年10月4日(日)〜2027年1月31日(日)

ここがポイント

バスキアは「勢いで描く天才」というイメージで語られやすい作家ですが、複製という視点を入れると見え方が変わります。同じ図像をコピーし、別の画面で繰り返す行為は、オリジナルとは何か、誰がイメージを所有するのかという1980年代美術の問題ともつながります。筆跡の激しさだけでなく、素材を選び編集する“構成者”としてのバスキアに注目する展覧会です。

参考:Princeton University Art Museum

Princeton University Art Museum 公式サイト →

8|古代ローマの「緑」は一色ではなかった ラマン分光法で壁画の顔料レシピを分析

学術誌『Heritage』で9月26日、スペイン・エシハの古代都市アスティギに残るローマ壁画の緑色顔料を分析した研究が公開されました。研究チームはラマン分光法を使い、主な緑色顔料として天然の緑土に含まれるグロコナイトを確認。さらに、緑土に合成顔料のエジプシャンブルーを組み合わせたり、場合によってはゲータイトを加えたり、青と黄を混ぜて別の緑を作ったりしていたことが分かりました。つまり古代の画工は「緑の顔料を塗る」だけではなく、色相や鮮やかさを調整するため複数の材料を意図的に組み合わせていた可能性があります。

ここがポイント

ラマン分光法は、物質にレーザー光を当てたときに返ってくる光の特徴から、含まれる物質を調べる分析法です。肉眼では同じ「緑」に見えても、材料の組み合わせは違うことがあります。今回の研究は、古代ローマの壁画制作に複数の緑の“レシピ”があり、工房の技術として使い分けられていた可能性を示します。色を見ることが、そのまま制作技術の研究につながる好例です。

参考:Heritage(MDPI)

Heritage 論文ページ →

9|消えていくストリートアートをどう残す? 屋外壁画の劣化研究を総整理

学術誌『Coatings』で9月29日、ストリートアートの材料と劣化、保存研究をまとめたレビュー論文が公開されました。屋外壁画は地域のアイデンティティや政治的メッセージ、記憶を担う一方、雨、日光、大気汚染にさらされ続けます。論文では、特に赤・黄・紫系の合成有機顔料が退色しやすい事例や、壁の下地、塗料の結合材、塩類、湿気など複数の要因が劣化に関わることを整理。保護コーティングについても、既存製品が必ずしも十分な性能を示さず、塗ったことで外観が変化するケースがあると指摘します。「屋外にある現代美術を保存する」という、比較的新しい保存修復分野の現在地を示す研究です。

ここがポイント

古い絵画なら美術館の中で温湿度を管理できますが、壁画は建物から切り離せず、雨も紫外線も避けられません。さらに、作品によっては「いつか消えること」まで表現の一部と考えられるため、保存するかどうか自体が難しい問題です。材料科学だけでなく、作者の意図、地域の記憶、都市景観まで考えなければならないところに、ストリートアート保存の特殊さがあります。

参考:Coatings(MDPI)

Coatings 論文ページ →

10|クリスティーズ「Up Close」が約491万ドル オンライン市場の結果を公表

クリスティーズは、ニューヨークで9月21日から10月2日まで開催したオンラインセール「Up Close」の結果を公開し、売上総額が491万720ドルとなりました。オンラインのみで進むオークションは、かつては版画や比較的価格帯の低い作品が中心という印象もありましたが、現在は戦後・現代美術を含む幅広い作品を扱う重要な販売経路になっています。今回のセールも、作品を会場で競り上げるライブオークションとは別に、一定期間オンラインで入札を受け付ける形式。個々の高額落札だけではなく、こうした販売形式にどの程度の資金が動いているのかを見ることは、アート市場の変化を追う手がかりになります。

ここがポイント

アート市場のニュースは「何億円で落札」という記録に目が行きがちですが、売り方そのものの変化も重要です。オンラインセールでは、数日〜数週間かけて入札が進み、世界中から参加できます。ライブ競売とは違う入口が定着するほど、作品を買う人の地域や価格帯も広がります。美術作品がどのように流通しているのかを見ると、美術館とは別の角度から現代の美術環境が見えてきます。

参考:Christie’s

Christie’s オークション結果 →

まとめ

10月5日のニュースを並べると、今日は「作品を見る」だけでなく、その背後にある技術や情報の蓄積へ目を向ける話題が目立ちました。キャンバス画の修復、日本の画論テキストのデータ化、古代ローマ壁画の顔料分析、ストリートアートの劣化研究は、時代も対象も違いますが、いずれも作品をどう調べ、どう理解し、どう未来へ残すかという問いにつながっています。一方、展覧会では『源氏物語』が千年のあいだ美術へ広がった過程、応為の夜景表現、須恵器の造形、シュルレアリスムの本、バスキアの複製技法と、よく知られた対象を別の角度から見直す企画がそろいました。美術史は完成した名作の一覧ではなく、材料、言葉、複製、保存、流通まで含めて動き続けています。