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日曜版アートニュース用アイキャッチ画像「増刊号 ART PICKs +び。ステーション Sunday Edition」

ART NEWS 5選【2026年10月第1週】|+び。STATION増刊号

美術館や展覧会のニュースだけでなく、作品の新発見、美術史研究、来歴調査までを網羅!

+び。STATIONでは、国内外で起きているアートの動きから、気になるニュースをピックアップ。日曜版では、2026年9月28日〜10月4日の1週間から、特に注目したいART NEWSを5本振り返ります。

「何が起きたのか」だけでなく、どこが面白いのか、なぜ注目したいのかも一緒に見ていきましょう。

国内のART NEWS

1|竹久夢二の未公開作《鴨河夜曲》を発見 ベルリン滞在中の1933年頃に制作か

竹久夢二のこれまで公開されていなかった日本画《鴨河夜曲》が見つかり、竹久夢二美術館で10月3日から一般公開されています。縦約56センチ、横約49センチの作品で、大文字山や五重塔を背景に、京都・鴨川沿いに座る舞妓を描いたものです。美術館は筆遣いや落款などから、夢二が欧州を旅していた1933年頃、ベルリンで制作した可能性が高いとみています。現地で夢二と交流した日本企業の駐在員が譲り受け、その後日本へ持ち帰ったとみられ、駐在員の孫から2025年に寄贈された後、美術館が調査を進めていました。外遊期には所在不明の作品も多く、夢二晩年の制作活動を考える新たな手がかりとなります。

開催場所:竹久夢二美術館(東京・文京区)
会期:2026年10月3日(土)〜12月20日(日)

ここがポイント

作品の発見で重要なのは、「知らない絵が一枚増えた」ことだけではありません。筆遣いや落款、旧所有者の記録をたどることで、いつ、どこで制作され、どのような経路で日本へ戻ったのかが見えてきます。《鴨河夜曲》は、資料の少ない夢二の外遊期を埋める可能性を持った一枚です。

参考:竹久夢二美術館、共同通信

竹久夢二美術館 公式サイト →

2|東京国立博物館に広重の浮世絵1,025点 「3大シリーズ」を全点紹介する展覧会が開幕

東京国立博物館で9月29日、特別展「歌川広重 江戸のベストアングル」が始まりました。きっかけとなったのは、内山晋コレクションから同館へ寄贈された浮世絵1,025点。広重作品を中心とする質の高いコレクションで、その寄贈を記念して開催される展覧会です。会期を3期に分け、《東海道五拾三次之内》《木曽海道六拾九次之内》《名所江戸百景》という広重を代表する3シリーズを、それぞれ全点展示します。東京国立博物館によれば、同館で広重だけに焦点を当てた本格的な展覧会は今回が初めて。風景だけでなく、天候や時間、人々の動きを巧みに組み込んだ広重の構図をまとまった形でたどれます。

開催場所:東京国立博物館 本館 特別5室
会期:2026年9月29日(火)〜12月20日(日)

ここがポイント

有名な一枚だけを見るのではなく、シリーズを順番に追えるのが今回の大きな魅力です。同じ街道や江戸の町でも、広重は視点の高さ、人物の置き方、雨や雪などを変えながら画面を組み立てました。「どこから景色を見ているのか」に注目すると、広重の大胆な構図がぐっと分かりやすくなります。

参考:東京国立博物館

東京国立博物館 公式サイト →

海外のART NEWS

3|スイス9館、カメルーン由来6,300点超の「来歴」を共同調査へ

スイスの9つの博物館が、所蔵するカメルーン由来の文化財6,300点以上について大規模な来歴調査を進めます。スイス連邦文化局は9月29日、2027〜28年に実施する26件の来歴研究へ総額約195万スイスフランを助成すると発表。その一つとして、各館が持つカメルーン関連資料について、どのように取得されたのか、誰の手を経て現在の所蔵先へ入ったのかを共同で調べます。宣教師や調査隊、市場を経由してスイスへ渡った資料も含まれ、カメルーン側の研究者や関係コミュニティーとも協働する計画です。単に「昔の所有者」を特定するだけではなく、現地社会にとって現在どのような意味を持つのかも研究対象になります。

ここがポイント

「来歴研究」は、作品や文化財が現在の美術館へ来るまでの履歴を調べる研究です。植民地時代に集められた品の場合、「なぜヨーロッパの博物館にあるのか」そのものが重要な問いになります。今回は所蔵館だけで完結せず、出身地域の人々と調査する点にも注目です。

参考:スイス連邦文化局、The Art Newspaper

スイス連邦文化局 公式発表 →

4|プラド美術館×アムステルダム国立美術館 「女性と美術史」を共同研究

プラド美術館とアムステルダム国立美術館が9月30日、女性と美術・歴史の関係を掘り下げる新たな共同研究を発表しました。専門家会議や国際的な博士研究員向けフェローシップを通じて、ハプスブルク帝国における女性の統治、社会的役割、表象を研究します。フェローシップは2027年9月に始まり、研究成果は2029年にアムステルダム国立美術館で予定される展覧会にもつながります。その展覧会では、マルグリット・ドートリッシュ、マリア・フォン・ウンガルン、マルゲリータ・ディ・パルマら、16世紀のネーデルラントを統治した女性たちに注目。作品を「描かれた女性」だけでなく、美術を注文し政治的イメージを形づくった側から読み直します。

ここがポイント

美術史では長く「誰が描いたか」が中心になりがちでしたが、「誰が作品を注文し、何のために使ったか」も重要です。とくに宮廷では肖像画や装飾品が、権力や統治者のイメージを伝えるメディアでもありました。女性を作品のモデルではなく、美術を動かした主体として捉え直す研究です。

参考:Rijksmuseum

Rijksmuseum 公式発表 →

5|クラスナーとポロックを「夫婦」ではなく二人の画家として見る メトロポリタン美術館で新展覧会

ニューヨークのメトロポリタン美術館で今日10月4日、「Krasner and Pollock: Past Continuous」が開幕します。リー・クラスナーとジャクソン・ポロックは1945年に結婚し、抽象表現主義を代表する画家として同じ時代を生きましたが、長くポロックの名声がクラスナーを覆ってきました。今回の展覧会は120点以上を通じ、二人を単なる「有名画家とその妻」としてではなく、それぞれ異なる背景と制作方法を持ちながら、互いに影響を与えた二人の芸術家として捉え直します。メトロポリタン美術館によれば、ニューヨークで両者いずれかを扱う大規模展は20年以上ぶりで、二人の全キャリアを並行してたどる展覧会は初めてです。

開催場所:メトロポリタン美術館 The Met Fifth Avenue(ニューヨーク)
会期:2026年10月4日(日)〜2027年1月31日(日)

ここがポイント

ポロックの「ドリップ・ペインティング」はよく知られていますが、クラスナーも色彩やコラージュ、抽象表現を絶えず変化させた重要な画家です。二人を横に並べることで、「一人の天才が美術史を変えた」という見方から離れ、芸術家同士の交流や影響まで見えてきます。

参考:The Metropolitan Museum of Art

The Metropolitan Museum of Art 公式サイト →

まとめ

今週は、展覧会の開幕だけでなく、「作品や美術史をどう調べ直すか」という動きが目立つ一週間でした。竹久夢二《鴨河夜曲》の発見では、一枚の作品から画家の空白期を埋める研究が始まり、スイスでは6,300点を超える文化財の来歴そのものが調査対象になっています。プラド美術館とアムステルダム国立美術館の共同研究や、クラスナーとポロックを並べて捉え直す展覧会も、これまで定着してきた美術史の見方を問い直す試みです。一方、東京国立博物館では新たに寄贈された1,025点をもとに、広重の代表シリーズをまとまって見る機会が生まれました。「新しい作品」だけでなく、「すでにある作品をどう見直すか」も美術ニュースになる。今週は、そんな美術研究の面白さがよく見える5本となりました。

今日のアート

パウル・クレー《さえずる機械》

パウル・クレー《さえずる機械》1922年
パウル・クレー《さえずる機械》1922年、油彩転写・水彩・インクほか、ニューヨーク近代美術館所蔵
画像出典:Wikimedia Commons(原画像:Die Zwitscher-Maschine (Twittering Machine), 1922 – Paul Klee.jpg)/Public Domain

1922年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵

細い一本の棒の上に、鳥のような生き物が並び、右端にはそれを動かすクランクが付いています。パウル・クレー(Paul Klee)の《さえずる機械》(Die Zwitscher-Maschine/Twittering Machine)は、どこか可愛らしいのに、見ているうちに少し落ち着かない気分になる作品です。鳥たちは自由に歌っているようにも、機械につながれて歌わされているようにも見えます。

画面をつくる黒い線には、クレーが好んだ「油彩転写」の技法が使われています。別の紙に描いた線を、油絵具を使って転写する方法で、手描きの線でありながら、かすれやにじみのような偶然性が残ります。水彩の淡い青やピンクと組み合わさることで、軽やかさと不穏さが同居する独特の空間が生まれました。

この作品には、美術史上の重い来歴もあります。1923年にベルリンの国立美術館がクレー本人から取得しましたが、1937年にナチス政権によって「退廃芸術」として没収されました。その後ニューヨークへ渡り、1939年にMoMAが収蔵しています。ユーモラスな絵の奥に、20世紀美術が政治に翻弄された歴史まで重なっている一枚です。

参考:The Museum of Modern Art(MoMA)

MoMA 作品ページ →