美術館や展覧会のニュースだけでなく、デザイン、映像、パブリックアート、アート市場までを網羅!
+び。STATIONでは、国内外で起きているアートの動きから、気になるニュースをピックアップ、今回は、2026年10月3日時点の最新情報から10本を紹介します。
「何が起きたのか」だけでなく、どこが面白いのか、なぜ注目したいのかも一緒に見ていきましょう。
国内のART NEWS
1|3,500以上の模様からたどる「マリメッコ展」が東京都庭園美術館で開幕
東京都庭園美術館で10月3日、「マリメッコ展 模様のちから」が始まりました。1951年にフィンランドで創業したマリメッコは、鮮やかな色と大胆な模様を特徴とするデザインハウス。これまでに生み出されたプリント・デザインは3,500種類以上にのぼります。本展では、各時代のドレスやファブリックに加え、プリントが生まれるまでの制作資料などを通して、単に「人気の柄」を並べるのではなく、模様がどのように考えられ、暮らしの中へ取り込まれてきたのかを紹介します。重要文化財の旧朝香宮邸という建築空間との組み合わせも見どころです。
開催場所:東京都庭園美術館 本館+新館(東京)
会期:2026年10月3日(土)〜12月20日(日)
ここがポイント
美術館というと「一点の絵を見る場所」という印象がありますが、デザインでは同じ模様が布や服、家具、生活用品へと広がっていきます。今回は、柄そのものだけでなく、模様の大きさや色の組み合わせが、着る人や空間によってどう印象を変えるのかを見ると面白い展覧会です。
参考:東京都庭園美術館 庭園美術館
2|アンドリュー・ワイエス、没後日本初の回顧展 日本初公開15点を含む100点
あべのハルカス美術館では10月3日から「アンドリュー・ワイエス展」が開幕します。アメリカを代表する画家のひとり、アンドリュー・ワイエス(1917〜2009)は、20世紀美術が抽象表現へ大きく進んだ時代にも、自身の身近な土地や人々を静かなリアリズムで描き続けました。今回の展覧会は、ワイエスの没後、日本では初となる回顧展。国内外から100点が集まり、そのうち15点が日本初公開です。華やかな事件を描くのではなく、家、野原、人物といった身近な題材から、時間の経過や人間の気配を浮かび上がらせた画家の仕事をまとまって見る機会となります。
開催場所:あべのハルカス美術館(大阪)
会期:2026年10月3日(土)〜12月6日(日)
ここがポイント
ワイエスの絵は写実的なので、「どれだけ本物らしく描けているか」に目が向きがちです。でも、少し離れて画面の余白や人物との距離を見てみると、むしろ“描かれていないもの”が大きな役割を果たしていることに気づきます。静かな絵なのに妙に記憶に残る理由を探すように見ると楽しめそうです。
参考:あべのハルカス美術館 Aham
3|「禅」と「ジブリ」はどこでつながる? 京都市京セラ美術館で体験型展覧会
京都市京セラ美術館では10月3日から「禅とジブリ」がスタートします。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと禅僧たちの対談をまとめた書籍『禅とジブリ』をもとに、ジブリ作品の世界と禅の考え方を重ね合わせて見る体験型の展覧会です。中心となるのは宮﨑駿監督の《君たちはどう生きるか》。公式説明では、善と悪を単純に分けないこと、すぐに答えを出さず余白を残すこと、「わからないもの」をそのまま受け入れる態度などを、禅との接点として紹介しています。アニメーションを作品解説だけでなく、ものの見方そのものから読み直す試みです。
開催場所:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ(京都)
会期:2026年10月3日(土)〜12月6日(日)
ここがポイント
今回はキャラクターや名場面を楽しむだけの展覧会ではなく、「なぜこの物語は簡単な答えを示さないのか」という視点から作品を見るのがポイントです。アニメーションを映像娯楽としてだけでなく、思想や視覚表現を考える入口として扱っているところに、美術館で開催される意味も見えてきます。
参考:京都市京セラ美術館 京都市京セラ美術館
4|没後30年、菅井汲の画業を初期から晩年まで 愛車ポルシェも展示
広島県立美術館で10月2日、「没後30年 菅井汲」が開幕しました。菅井汲(1919〜1996)は、戦後にフランスへ渡り国際的に活動した日本人画家のひとり。本展では初期から晩年までの作品を通して、その表現がどのように変化していったのかをたどります。なかには木枠から外した状態で長く保管されてきた日本初公開作品も含まれています。さらに会場には、菅井が所有していた1973年式ポルシェ・カレラRSも登場。絵画だけで画家を説明するのではなく、速度や機械への関心を含め、菅井の感覚や生活と制作との関係まで見せる構成になっています。
開催場所:広島県立美術館 3階企画展示室(広島)
会期:2026年10月2日(金)〜12月6日(日)
ここがポイント
画家の展覧会に自動車が置かれると少し意外に感じますが、作品以外の「その人が何を見て、何に惹かれていたのか」を知ることで、絵の見え方が変わることがあります。形や色だけを追うのではなく、菅井が生きた20世紀の都市、機械、スピード感まで想像してみると面白そうです。
参考:広島県立美術館 HPAM
5|草間彌生約30点が登場 SBIアートオークションが10月セールを発表
SBIアートオークションは10月2日、今月24・25日に開催する「第84回 SBIアートオークション|Modern and Contemporary Art」の内容を発表しました。今回注目されるのが、草間彌生の作品約30点。1991年制作のキャンヴァス作品《かぼちゃ》をはじめ、色紙、シルクスクリーン、エッチングなど、異なる時期と技法による作品が出品されます。このほかデイヴィッド・ホックニーの版画や、ゲルハルト・リヒター、ジュリアン・オピーらの作品も登場。展覧会とは異なり、作品に価格がつき、実際に売買される「市場」から現代美術を見るニュースです。
開催場所:ヒルサイドフォーラム(東京・渋谷)
会期:2026年10月24日(土)・25日(日)
ここがポイント
オークションを見るときは、落札額だけを見るよりも「同じ作家のどの時代、どの技法の作品が市場に出ているか」に注目すると、美術の見え方が広がります。草間彌生だけでもキャンヴァス、版画、色紙などが並ぶため、「作家名が同じなら価値も同じ」ではないことが実感できる機会になりそうです。
参考:SBIアートオークション SBIアートオークション
6|竹久夢二の未公開作《鴨河夜曲》を発見 ベルリン滞在中の1933年頃に制作か
竹久夢二美術館が、これまで公開されていなかった竹久夢二《鴨河夜曲》を調査し、10月3日から一般公開しています。縦約56センチ、横約49センチの日本画で、大文字山や五重塔を背景に、京都・鴨川沿いに座る舞妓を描いた作品です。美術館は筆遣いや落款などから、夢二が欧州を旅行していた1933年頃、ベルリンで制作した可能性が高いと推定しています。現地で夢二と交流した日本企業の駐在員が譲り受け、その後日本へ持ち帰ったとみられ、駐在員の孫から2025年に美術館へ寄贈されました。外遊期の作品には現在所在が分からないものも多く、晩年の制作を考える新たな手がかりとなります。
開催場所:竹久夢二美術館(東京・文京区)
会期:2026年10月3日(土)〜12月20日(日)「夢二の日本 描かれた理想郷」内で公開
ここがポイント
面白いのは、「知られていなかった絵が出てきた」というだけではありません。筆遣いや落款、過去の所有者との関係を調べることで、いつ、どこで描かれ、どのように日本へ戻ってきたのかが少しずつ見えてきます。作品そのものと来歴調査を組み合わせて、画家の空白を埋めていく美術研究の一例です。
参考:竹久夢二美術館、共同通信配信記事
7|柿内青葉の「知られざる沼津時代」 新発見作品をもとに研究発表
10月3日に開かれる明治美術学会の2026年度第3回例会で、女子美術大学の藤田百合准教授が「発見された作品から浮かびあがる柿内青葉―知られざる沼津時代」と題した研究発表を行います。柿内青葉は鏑木清方に学び、大正から昭和にかけて日本画を制作した女性画家です。女子美術大学美術館では2021年にも作品やスケッチブック、書簡などをまとめて紹介する展覧会が開催され、藤田氏が研究を続けてきました。今回の発表では、新たに発見された作品を手がかりとして、これまで十分に知られてこなかった沼津時代に光を当てます。ただし、発見作品の点数や作品名、具体的な研究成果については、現時点で公開情報から確認できません。
開催場所:実践女子大学 渋谷キャンパス701教室(東京)
日時:2026年10月3日(土)14:35〜15:35
ここがポイント
美術史では、有名な代表作だけでなく「ある時期にその画家が何をしていたのか」を調べることも重要です。これまで資料が少なかった時期の作品が見つかれば、画風の変化や生活環境、制作活動そのものを見直すきっかけになります。今回は研究発表の段階なので、成果の詳細が公開された後に改めて追いたいニュースです。
参考:明治美術学会、女子美術大学美術館、ART PLATFORM JAPAN
海外のART NEWS
8|スイス9館、カメルーン由来6,300点超の「来歴」を共同調査へ
スイスの9つの博物館が、所蔵するカメルーン由来の文化財6,300点以上について、大規模な来歴調査を進めることになりました。スイス連邦文化局は9月29日、2027〜28年に実施する26件の来歴研究プロジェクトへ総額約195万スイスフランを助成すると発表。そのうち9館による共同研究では、各資料がいつ、誰によって収集され、どのような経路でスイスの博物館へ入ったのかを調べます。対象には植民地時代の宣教師や調査隊、市場を経由して収集されたものも含まれます。研究にはカメルーン側の関係者も参加し、現地社会にとって現在どのような意味を持つのかまで検討される予定です。
ここがポイント
「来歴」とは、作品や文化財が現在の所蔵先へたどり着くまでの履歴のことです。誰が作ったかだけでなく、「なぜヨーロッパの博物館にあるのか」を調べる研究ともいえます。今回の特徴は、記録だけを調べるのではなく、カメルーン側の人々とも協働すること。植民地時代に形成された博物館コレクションを、現在の視点から見直す動きとして注目できます。
参考:スイス連邦文化局、The Art Newspaper
9|ルノワール45点がロンドンへ 英国では20年ぶりの大型展「Renoir and Love」
ロンドンのナショナル・ギャラリーで10月3日、「Renoir and Love」が開幕します。ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841〜1919)が1860年代半ばから1880年代半ばにかけて描いた作品を中心に45点を紹介するもので、同館によれば英国では20年ぶりとなる本格的なルノワール展です。焦点となるのは「愛」だけではありません。友人同士の会話、カフェや劇場での交流、踊り、恋愛、家族など、人と人が一緒にいる場面を通して近代都市の生活を読み解きます。《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》も出品されます。
開催場所:ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
会期:2026年10月3日(土)〜2027年1月31日(日)
ここがポイント
ルノワールは「明るく幸せそうな絵を描いた画家」と紹介されがちですが、今回注目したいのは、人と人との距離です。誰が誰を見ているのか、同じ場所にいるのに誰が少し離れているのか。人物同士の関係を追っていくと、華やかな画面の中に小さな物語が次々と見えてきます。
参考:The National Gallery ナショナル・ギャラリー
10|サルマン・トゥール、ヨーロッパ初の個展 古典絵画と現代都市が交差
ロンドンのコートールド・ギャラリーで10月2日、サルマン・トゥール(Salman Toor)の「Someone Like You」が始まりました。1983年ラホール生まれ、ニューヨークを拠点とするトゥールにとって、ヨーロッパ初の個展です。2019年以降の絵画19点とドローイングを通じて、友情、恋愛、孤独、移民としての経験や「居場所」をめぐる感覚を描きます。興味深いのは、現代の都市生活を描きながら、17世紀オランダ絵画、マネ、フェルメール、ムガル絵画など、過去の美術史を積極的に参照していること。古典絵画の構図や雰囲気が、スマートフォンのある現代へと入り込んでいます。
開催場所:コートールド・ギャラリー(ロンドン)
会期:2026年10月2日(金)〜2027年1月10日(日)
ここがポイント
「現代美術」と聞くと過去の絵画とは別物に感じますが、トゥールの作品を見ると、美術史は現在の画家にとって巨大な素材庫でもあることがわかります。どこか昔の絵のようなのに、登場人物や服装、スマートフォンは現代。この“時間のずれ”を探すだけでも作品に入りやすくなります。
参考:The Courtauld Courtauld
「Salman Toor: Someone Like You」公式ページ →
11|尾形光琳だけではない「琳派」 ニューオーリンズで約60点を紹介
ニューオーリンズ美術館では10月2日、「Second Nature: Japanese Rinpa Paintings from the Gitter-Yelen Collection」が開幕しました。
琳派をテーマに、掛軸、屏風、扇面、画帖、巻物など約60点を紹介する展覧会です。俵屋宗達、本阿弥光悦、尾形光琳といった京都の作家だけでなく、中村芳中、酒井抱一、鈴木其一など、江戸・大坂で活動した後代の琳派にも大きく焦点を当てています。とくに展覧会では、光琳の作品や理念を再発見し、その後の系譜を形づくった酒井抱一の役割をあらためて考える構成となっています。
開催場所:New Orleans Museum of Art(米ルイジアナ州)
会期:2026年10月2日(金)〜2027年2月14日(日)
ここがポイント
「琳派=光琳」と覚えてしまうと、一人の画家や固定されたグループのように見えてしまいます。しかし実際には、時代を越えて過去の作品を学び直しながら受け継がれた表現です。誰かが誰かを“再発見する”ことで美術史そのものが形づくられていく、という視点で見ると琳派の面白さがぐっと広がります。
参考:New Orleans Museum of Art New Orleans Museum of Art
12|プラド美術館とアムステルダム国立美術館、「女性と美術史」を共同研究
プラド美術館とアムステルダム国立美術館が、女性と美術・歴史の関係を掘り下げる新たな共同研究を始めます。9月30日に発表された計画では、専門家会議や国際フェローシップを通じて、16世紀ハプスブルク領ネーデルラントを統治したマルグリット・ドートリッシュ、マリア・フォン・ウンガルン、マルゲリータ・ディ・パルマらに注目。彼女たちが政治を担う一方で、美術作品の注文や自身のイメージ形成に芸術をどう利用したのかを研究します。フェローシップは2027年9月に開始予定で、研究成果は2029年にアムステルダム国立美術館で開催予定の展覧会にもつながります。
ここがポイント
これまでの美術史では、作品を「誰が描いたか」に注目しがちでした。しかし作品を注文した人や、どんな目的で作らせたのかを調べると、別の歴史が見えてきます。とくに宮廷美術では、肖像画や豪華な装飾品が政治的なイメージづくりにも使われました。女性を単なる「描かれた人物」ではなく、美術を動かした主体として捉え直す研究です。
参考:Rijksmuseum
13|30ドルで見つかったアバークロンビー作品、約135万ドルで落札
長く所在が分からなくなっていたガートルード・アバークロンビー(Gertrude Abercrombie、1909〜1977)の《Alderman Merriam’s Shells》が再発見され、10月1日のオークションで135万2,600ドルで落札されました。1951年に描かれた作品で、およそ75年間、公の場から姿を消していました。今年夏、ミシガン州のエステートセールで偶然見つかり、購入価格はわずか30ドル。購入者が作家の展覧会を訪れたことをきっかけに調査が進み、1952年の新聞写真などから作品の来歴が確認されました。事前予想15万〜25万ドルを大きく超え、アバークロンビーの作品として新たなオークション記録となりました。
ここがポイント
「30ドルが135万ドルに」という数字だけでも驚きますが、美術として面白いのは、行方不明だった作品が資料との照合によって再び美術史へ戻ってきたことです。作品の署名、古い新聞記事、展覧会資料などを組み合わせることで、本物かどうかだけでなく、過去にどこにあった作品なのかも見えてきます。再発見と研究、市場評価が一度につながったニュースです。
参考:Freeman’s
14|市役所が巨大なギャラリーに!オースティン「People’s Gallery」に100人超が参加
アメリカ・テキサス州オースティンでは10月2日、市庁舎を展示空間として使う「People’s Gallery 2026」が開幕しました。2年に一度開催される取り組みで、今回はオースティン都市圏で活動する100人を超えるアーティストが参加。絵画、彫刻、ドローイングなどが、市庁舎の各所に展示されます。さらに来場者はお気に入りの作品へ投票でき、最多票を得た作品は「People’s Choice」として市の恒久的なアートコレクションへの購入候補になります。行政施設を単なる展示会場にするのではなく、市民が作品の選択にも関わる仕組みが特徴です。
開催場所:Austin City Hall(米テキサス州オースティン)
会期:2026年10月2日(金)〜2028年5月26日(金)
ここがポイント
パブリックアートというと、街角に置かれた大きな彫刻を想像しがちです。しかし公共空間とアートの関係はそれだけではありません。日常的に行政手続きが行われる市庁舎へ作品を置き、市民自身が「残したい作品」を選ぶ。美術館とは違う場所で、誰が作品を見るのかを考えさせる取り組みです。
参考:City of Austin
「People’s Gallery 2026」公式ページ →
まとめ
10月3日のニュースを見ていくと、「作品を見る場所」と「作品の読み方」の両方が広がっていることが見えてきます。マリメッコでは生活の中の模様が美術館へ入り、「禅とジブリ」ではアニメーションが思想を考える入口となり、オースティンでは市庁舎そのものが展示空間になりました。
一方、ワイエス、菅井汲、ルノワール、琳派の展覧会では、よく知られた作家や美術史を別の角度から見直す試みが続いています。さらに、オークションやクリエイター支援のニュースからは、作品が生まれた「その後」に、社会や市場とどうつながっていくのかも見えてきました。美術は美術館の中だけで完結するものではない。そのことを改めて感じさせる一日です。
