キュビズムとは?ものの見え方を組み立て直した前衛芸術【忙しい人のための3分講座】
この記事は3分ほどで読める入門記事です。キュビズムとはどのような芸術運動だったのかを、できるだけ身近な言葉で、短く整理していきます。
キュビズムとは何か
キュビズムは、二十世紀初頭のフランスで展開した前衛芸術運動です。目の前の人物や物を、そのまま自然に見える形で再現するのではなく、いくつもの面としてとらえ直し、画面の中で組み立てるように表したところに大きな特徴があります。十九世紀までの西洋絵画では、遠近法や陰影を用いながら、現実に近い見え方を整えていくことが重んじられてきました。けれど、キュビズムの作家たちは、それだけでは物の姿を十分にとらえきれないと考えました。
私たちは、ひとつの物を見るとき、いつも同じ角度から見ているわけではありません。少し位置を変えたり、手に取って向きを変えたり、前に見た印象を思い出したりしながら、その物を理解しています。キュビズムは、そうした複数の見え方を、一枚の画面の中に取り込もうとした試みでした。見たままを写すのではなく、見るという体験そのものを考え直そうとした芸術だったともいえます。
この動きの中心にいたのが、パブロ・ピカソ(ピカソ/Pablo Picasso)と、ジョルジュ・ブラック(ブラック/Georges Braque)です。二人は、人物や静物の形を細かく分析し、それぞれの面を組み合わせながら、新しい絵画の可能性を探っていきました。キュビズムは、形を単純に崩した絵というより、世界の見え方そのものを組み立て直した運動として見ると、その面白さが伝わりやすくなります。
キュビズムの作品はどこが新しかったのか
キュビズムの作品を最初に見ると、少し難しく感じることがあるかもしれません。顔や楽器や瓶が描かれていても、その形がすぐにははっきり分からないことがあるからです。けれど、それはわざと分かりにくくしているのではありません。ひとつの方向からだけ見た姿ではなく、複数の角度からとらえた形を、同じ画面の中に重ねようとしているからです。
初期のキュビズムでは、形は細かく分けられ、色もおさえた作品が多く見られます。これは、あとに分析的キュビズムと呼ばれる傾向です。人物や静物は多くの面に分解され、前後の関係も一見するとつかみにくくなります。しかし、よく見ていくと、物の特徴は消えていません。見慣れた形をいったんほどき、別の見方で組み立て直しているのです。
その後には、紙片や印刷物などを画面に取り入れる表現もあらわれます。これが総合的キュビズムです。新聞の文字や壁紙の模様が作品の中に入り込むことで、絵画は現実をまねるだけのものではなく、素材を選び、組み合わせ、構成する場でもあることがはっきりしてきました。ここでは、何が本物で、何が描かれたものなのかという境目も、静かに揺さぶられます。
キュビズムの新しさは、見えるものを似せて描くことよりも、どのように理解し、どのように再構成するかを重視したところにあります。そのため、作品を見るときは、何が描かれているのかを急いで当てようとしなくても大丈夫です。面の向きや重なり方をゆっくり追っていくと、対象が一方向からではなく、いくつもの視点の集まりとして表されていることに気づきます。
まとめ|キュビズムは見ることを考え直した芸術
キュビズムは、物の形を変わったふうに描いた運動として知られることがあります。けれど、本当に新しかったのは、形を崩したことそのものではありません。私たちは世界をどう見ているのか、ひとつの物をどのように理解しているのか。その問いを、絵画の中で丁寧に考え直したところに、キュビズムの大きな意味があります。
その試みは、その後の美術にも大きな影響を与えました。絵画は、現実を美しく写し取るだけのものではなく、世界のとらえ方そのものを示すことができる。キュビズムは、その可能性を静かですが力強く開いていったのです。
キュビズムの作品を見るときは、まず答えを急がず、形の面や線の流れに目を向けてみてください。そこには、目の前の物をそっくり写すのではなく、見るという行為そのものを新しく考えようとした、真剣な探究があります。キュビズムとは、世界の姿を描くと同時に、私たちの見方そのものを問い直した芸術だったのです。
